【連続GRAVITY小説】〜Gravity-Link〜第十三話:共鳴、あるいは奇跡の呼び名【 あきっくすルーム / 23:30 】 その日のルームは、不思議と凪のような穏やかな空気に包まれていた。 あきっくすは、手元のスマートフォンを握りしめる。画面の向こうには、何も知らないもちこさんとけーぞーさんが、いつものように穏やかな言葉を交わしている。 あきっくすは、わざと、けれど震える声を抑えて、ある「問い」を投げかけた。「……皆さんは、人生でたった一度だけ言葉を交わした人で、どうしても忘れられない人っていますか?」 少しの沈黙の後、もちこさんがどこか遠くを見るような声で口を開いた。『……います。数年前、雨の日に立ち寄った小さなギャラリーで。迷っていた私に「そのカップは、あなたを許してくれますよ」と声をかけてくれた、スタッフの女性。あの時の言葉が、今の私の支えなんです』 その瞬間、スピーカー越しに、けーぞーさんが小さく息を呑む音が聞こえた。【 震える声、重なる記憶 】 ルームのログが、一瞬だけ止まる。 テスターさんからあきっくすにだけ、リアクションの「!」が届いた。 けーぞーさんの返信は、いつもより少しだけ遅かった。けれど、ようやく発せられた彼女の声は、これまでに聞いたことがないほど微かに震えていた。『……もちこさん。その時、あなた……「雨の日の珈琲は、自分を許す味だ」って、泣きそうな顔で笑いませんでしたか?』 今度は、もちこさんが息を止める番だった。『……え? どうして、それを……。私、誰にも言っていないはずなのに』 けーぞーさんは、今度ははっきりと、溢れ出す感情を隠さずに言葉を繋いだ。『私、ずっと探していたんです。あの日、私の拙い展示に、誰よりも深い理解を示してくれたあのお客さん。……あなただったんですね。ずっと、すぐ隣にいたんですね、もちこさん』【 溢れ出す感情の渦 】『あ……!』 もちこさんの声が詰まる。それは、数年の時を超えて、バラバラだったパズルのピースが完璧に噛み合った瞬間の、歓喜と驚きが混ざった溜息だった。 あきっくすは、溢れそうになる涙を堪えながら、そっとマイクをオンにする。「……お帰りなさい、二人とも。ここは、再会の場所だったのかもしれませんね」 画面の中で、テスターさんが静かに、何度もリアクションの拍手を送っている。 顔は見えない。声と文字だけの繋がり。 けれど、今のこのルームには、確かにあの雨の日のギャラリーと同じ、温かな光が満ちていた。 あきっくすは、けーぞーさんの震える声を聴きながら、胸の奥が熱くなるのを感じていた。(運命は、本当にあるんだ。そして僕は……その一部になれたんだ)(つづく)#連続GRAVITY小説 #第13話 #なかなか素人だがいい感じじゃないかな #もちこさんとけーぞーさん #storysong