《合作作品》「想い」@モ! ×あお(モ!)「やんぬるかな剣」とあだ名される神はこう呟いた。「海が欲しい」この発言は周りを驚かせた。小間使の1人が思わず口に出した。「やんぬるかな剣様、あなた様は既にこの巨大な大地の支配者であらせられます」やんぬるかな剣は熱した鉛のような鼻息をふかし、そばのものたちにこう言った。「それがどうしたというのだ?」先の小間使はその熱風にかすかな火傷を負いながら、獅子のように勇気を振り絞りやんぬるかな剣に対峙した。「海は、さだめし宝玉様のご領地で、空は、過ぎ去りし鏡様の所領でございます」やんぬるかな剣は4本の腕を乱暴に振り下げた。大地はうねりをあげて揺れた。「それがどうしたというのだ!!」勇敢なる小間使は震え上がった。同時に幾千というやんぬるかな剣の部下たちも、皆1人残らず震え上がった。小間使はもう何も言えなくなっていた。「取りに行くぞ」身の丈50メーターはある荒ぶる神が玉座から立ち上がった。部下たちは、遠く離れたものでも、その振動で主人が立ち上がったことを感じた。皆が皆、嫌な予感を感じたのである。(あお)碧淵の心は、静かで深い海のようだった。欲望も、奪うことも、争いも、その心に重きを置かれることはない。ただ在る——それだけで、世界の海はその広がりを守り、波は満ち引きし、潮の音は遠くまで届く。しかし、深い青の表層には、長い時の中で繰り返された奪う者たちの痕跡が染み込んでいた。かつて誰かが欲望に溺れ、海の宝を手にしようとしたたび、碧淵の色に薄い灰色が混ざった。それは悲しみでも怒りでもない、ただ存在の記憶——清らかさに宿る世界の痛みの痕跡だった。長い年月、奪う者は数多く現れ、消え、碧淵の青は深まり、濁りを帯び、しかしなお広大で静かな色を保っていた。その静寂に、また新たな波動が届いた。——奪う者が来た。大地を揺るがす、荒ぶる存在の振動。やんぬるかな剣、四本の腕を揺らし、熱した鉛の鼻息を吐きながら海を目指して歩を進める。碧淵は心の奥で波を揺らすことも、灰色を払うこともせず、ただ在る。奪う者の力、欲望、破壊の意志——それらは深青に混ざった灰色をさらに濃くするだけで、青はそれでも消えない。その存在感は、荒ぶる剣にとって触れられぬ壁となる。碧淵の静けさは、力ではなく、ただ「あること」によって、世界に秩序を示していた。(モ!)「在って在るものよ!その名もさだめし宝玉よ!なぜ地上を飲み込まない?」やんぬるかな剣の軍隊はすでに遠征し、海のあるところにまでやってきていた。波濤に立ってやんぬるかな剣は叫んだ。周りには幾万という戦士たちが林のように控えている。「お前にはその力があるはずだ!征服は力あるものの義務だ!」だが海は海鳴り以外は静かに、動物の声さえ聞こえなかった。海は、かつて海と言われていた場所は大地となった。だが、海は広すぎる。やんぬるかな剣は2000平方キロ大地にしたところで飽きた。抵抗がまるでないのである。侵略はとても容易く、やんぬるかな剣が一足踏めば海はどれほど深くとも、すなわち大地へと変わる。だが、果てが見えない。手応えもない。つまらないのだ。やんぬるかな剣の部下もだらっとしている。初めは空城の計で油断させ、こっちが油断したら襲ってくると思われた。しかしそうではなかった。本当に、まるで、抵抗がないのだ。こんなことはなんでもないというような、嘲笑すらなかった。これでは散歩と選ぶところがない。「さだめし宝玉よ!悔しくはないのか!?今しもお前の領土が我に蹂躙されているぞ!」しかし、答えはなく波も平穏そのものだった。「帰るぞ」やんぬるかな剣は静かにこう言い、自身の作った陸をとって返し歩いて帰った。部下たちも黙ってこれに従った。やんぬるかな剣は思った。せめて嵐が来れば、せめてサメが来れば、それを敵意と思うことができたのにと。空も海も青く、まるで彼らの背中を優しい目で見送っているようだった。(あお)その日、やんぬるかな剣の軍勢が海を蹂躙して引き返そうとしたとき、空に一枚の鏡が掲げられたように光が広がった。天鏡。過ぎ去りし鏡——空の神は、長き記憶を映し返す存在。奪う者がかつて踏み入れた軌跡を、すべて記録している。やんぬるかな剣が歩めば、その四本の腕が振るえば、空はただ映し返す。大地を揺るがす力も、奪おうとする欲望も、空の鏡面には虚しく反射して消えた。「やんぬるかな剣よ」低くも澄んだ天鏡の声が響いた。「お前の影はすでに、空に焼き付けられている。奪い取った大地も、踏み荒らした海も、すべて時の鏡が覚えている」軍勢がざわめいた。誰一人、空を傷つけることはできない。矢も、剣も、すべては映し返されて消えていく。空の神は戦うことなく、ただ記憶をもって守る。空はただ静かに青を映し返した。海はその映りゆく青に抱かれている。だからこそ、奪う者の力に抗うことなく、ただ「在る」ことができるのだ。静けさの背後には、終わりなき空の眼差しがあった。誰も知らぬうちに、海は空に守られている。そして空もまた、海を映すことでその広がりを知り、己の正しさを保っている。奪う者には見えない。海と空のあいだを満たす、透きとおった慈しみの往復が。愛する者があるから海は揺るがず、見守る者があるから空は澄んでいる。#空は映し海は抱く#神々の対話#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸🎼編集後記🎼(モ!)あおさんにも無茶振りをと思い、よくわからない名前の神々が戦う戦記ものを書きました。小手返しでコロリと返されました。全然あおさん戦わないw 面白かったです。(あお)自身の外界との繋がり方や矛盾、力と静寂、破壊と存在、欲望と慈しみ。そのようなものを書いてみました。久しぶりのモ!さんからの合作のお誘いだったのに……恋をして腑抜けな私は、ついつい恋の色も混ぜてしまいました(笑)モ!×あお、いかがでしたか?