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風ささ
突然 空から落ちて
白い湯船に沈んだ黒い蝿
吊るされた裸電球に
目がくらんでしまったのだろうか
思いがけない失速 操舵ミス
救い出そうと
湯船をかき回して指先に
飛び上がろうとはしない黒い蠅
3
風ささ
ブナの葉の隙間から零れ落ちる
太陽の陽射しは柔らかい
まぶしいことは 嬉しいことだと知る
4風ささ
柵の上に止まり
向かい合う赤とんぼ
その複眼には
一体 どんな僕が映る
それも僕だとて
どれがほんとうの僕だろうか
お前が言葉を持つものならば
頭を下げて教えを請いたい
6風ささ
流れが岩を乗り越えるとき きらりと光る
そうしてするりと乗り越えてゆく
流れは岩を乗り越えることを楽しんでいる
僕も苦しみを乗り越えるごと
明るく光りたいのに
1風ささ
白いお湯の面では
首を伸ばし
青空に手を振るすすき
ほんとうは天に向って
伸びてゆきたいのだろうに
その意気地が秋にくじかれて
俯いたまま
お湯の中にだけ
すすきのほんとうの気持ちが
淀んだままだ
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