先週、一人暮らしの母が倒れて入院した。それ以来ずっと東京と実家を行ったり来たりしている。10年前、兄が突然この世を去ったとき。今年、父が静かに息を引き取ったとき。そして今、母が弱々しく点滴を受けている姿を見るたび。同じ後悔が、まるで癒えることのない傷のように心を締め付ける。なぜ、あのとき地元に残らなかったのか。もう二度と会えない高校時代の友の言葉が、胸の底で鈴の音みたいに響く。「家族は一緒にいなければだめなんだよ」彼女はもういない。兄も、父も。あの頃の私には分からなかった言葉の重さが、今は魂の奥底まで染み渡っている。『今日の憂鬱は安売りで。』より「鈴の音みたいに」#エッセイ#神楽坂優#カクヨム