美容師のおばあちゃん(79)へ初孫の成人式の振袖を、京都まで買いに行こうと楽しそうに陰謀を練ってらっしゃるなか大変申し訳ございませんが、わたくし(初孫)は振袖はいりません。またわたくしは、成人式にも出るつもりはございません。まだ幼き学生時代、わたしは友達が沢山いると言ったのは嘘です。テストの成績は学年・クラスで常に上位にいると言ったのも嘘です。出来損ないで、期待を大きく裏切ってしまったことを大変申し訳なく思います。ただ、それでも私を愛し育ててくださったおばあちゃんは、振袖を買うと言うでしょう。どうか代わりに、私にペンと紙を買ってください。どんなものでもいいです。簡素であっても飛んで喜びます。当時は脳なしでしたが、歳を経るにつれ、わたくしは読書と勉学の素晴らしさに気づきました。「学び」が、わたしの人生を豊かに、そして自分と人とを繋いでくれました。これはわたくしが考えるに、値打ちなど全くもってつけることは出来ない、この世で最も崇高なものでございます。一生を通す様々な「学び」を、おばあちゃんがくださった紙とペンを使って、20歳を迎えてからも真摯に励みたく思います。おばあちゃんの存在をいつも側で感じ、安心してこれからも生きてゆくことができます。振袖はいりません。どうかわたくしに、紙とペンを、ください。(初孫より)#祖母への手紙#下書き