《合作作品》みっちー × あお「いちょうのベンチ」---(あおサイド)銀杏の葉が、空からひらひらと落ちてくる。落ち葉を踏むたび、ぱり、と小さな音が弾けた。私はベンチに腰かけ、色づいた木々と、移りゆく雲をぼんやり見上げている。きれいだな。秋の高い空は、意識を遠くへ連れ出す。風に乗って世界中を旅し、まだ知らない町や、これから出会う物語を訪ね歩く。誰にも邪魔されず、景色を感じ、想像をふくらませる──それが私のごほうびタイム。秋の公園には、元気に走り回る子どもたち、おしゃべりに夢中のママたち、そして手をつないで歩く恋人たち。みな一様に、幸せそうに見える。私も、幸せだ。……でも、にぎわう公園で妄想に花を咲かせる、結婚適齢期女子。端から見れば、少し痛々しいかもしれない(笑)いつものように、ひとりで空想の森をさまよっていると──「すみません、この隣、いいですか?」顔を上げると、あなたが片手に缶コーヒーを持って立っている。公園のベンチは、ほかにもいくつも空いている。……なんで、ここ?「どうぞ」とりあえず返事はしたけれど、心の奥で小さく警戒灯が灯る。腰を下ろしたあなたの足元に、金色の落ち葉がひらりと舞い込んだ。それを拾い上げ、ひょいと私の膝の上に置く。「きれいな色ですね」短い一言。なのに、風の匂いが少しだけ変わった気がした。---(みっちーサイド)今日は仕事が休み。よく来る公園で何か飲みながらゆっくりするのが自分流の休日の過ごし方。自販機でコーヒーを買い、いつもの定位置のベンチへ …あれ?先客がいる。珍しい、このベンチ、木の影になっていてあまり座る人が居ないのだが、ここからの景色が1番綺麗だからいつもここに座っていた。どうしてもそこが良かったので──「すみません、この隣、いいですか?」声をかけた。「どうぞ」っと返ってきたものの、彼女は明らかに警戒しているような顔でこちらをちらっと見た。まあ、気にしないけどね。---(あおサイド)ベンチに腰を下ろした時、銀杏の葉が足元に落ちてきた。ベンチに腰かけたあなたは、足元の銀杏の葉を拾い上げ、そっと私の膝に置いた。「きれいな色ですね」その仕草に、少し警戒していた心が揺れる。思わず口をついて出た。「……このベンチ、景色が一番きれいに見える場所なんですよ」あなたが驚いたように顔を上げる。「もしかして…あの?」私もうなずく。正面の池に映る銀杏並木。ちょうど噴水が上がるタイミングで、水面に光の帯が走る。その瞬間、左右の水筋と映る雲や銀杏が重なり、淡い金色のハートが一瞬浮かぶ。水面にはハートが映り、二つを合わせるとまるでクローバーのように見えた。水の揺らぎに反射して形は一瞬で崩れるけれど、その奇跡が私たちの心の距離をそっと縮めるように感じられた。「……見えました?」「うん、ハートだ」「二つ合わせたら──」「……クローバー!」目が合った。その笑顔に、胸の奥がとくんと跳ねる。小さな反射のクローバーは、私たちの手と手が自然に触れ合う瞬間と重なり、二人の時間をほんのりと照らしていた。そこからは、時間が溶けるように過ぎた。コーヒーの話から、好きな音楽、旅の思い出、子どものころの失敗談まで。笑いすぎて頬が痛くなるほどだった。翌日も、その次の日も、そしてまた次の日も、気づけば毎日、このベンチで会っていた。噴水のハートとクローバーの瞬間を何度も一緒に見た。水面に揺れる小さなハートを、二人で追いかけながら手を触れ合い、触れた手をもう離さなくなった。幻想的な光景は、日々の何気ない時間に静かな温もりを添え、二人の距離をゆっくりと溶かしていった。一緒にいる時間は、ただ楽しいだけじゃなかった。ふと視線が合うたび、胸が温かくなる。あなたの隣、それがだんだんと私の日常になっていった。楽しい時間を重ねるごとに、あなたへの愛おしさが少しずつ増していった。気づけば、自然に未来のことを思い描くようになっていた。手を重ねるたびに感じるこの大きくて温かい手の感触──そのぬくもりに触れると、この手を大事にしたいという気持ちと、もうこの手以外では幸せを感じられないという確かな思いが、胸の奥に静かに満ちていった。---(みっちーサイド)彼女もここからの景色が良いと分かっていてこのベンチを選んでいた。僕には見えていないクローバーまで。まるで僕はたくさんのクローバーの中で四葉を見つけた気分だった。目が合い、笑い合う。自然と触れ合う手。秋なのに暑いと感じるほどに、2人の感情は高まっていた。その暑さで、氷が溶けるかのように時間はすぎて、何気ない話をした。お互い笑いあって頬が痛い!その日から、次の日も、その次の日も毎日ベンチで会っていた。2人だけの特別な時間。何度も見たハートとクローバー、自然に握り合う手。一緒にいるだけで心があたたかくなる。彼女の隣が、居心地よかった。彼女への好意は日を重ねる毎に強く、あつくなっていった。お互いに何も言っていないのに、二人で暮らしている情景まで浮かんでいるぐらいに。僕は覚悟を決めた。───彼女に告白しよう。---(あおサイド)ある朝、目が覚めるとスマホに通知があった。あなたからの短いメッセージ。──「もう会わない方がいい」一瞬、意味が分からなかった。何度読み返しても、言葉は変わらない。公園に行った。いつものベンチは、黄金色のいちょうの葉にすっかり覆われていた。まるで、私たちの時間をそっと埋めてしまうかのように。昨日までの笑い声は、落ち葉の下に沈んでしまった。触れ合ったぬくもりは、冷たい風にさらわれていった。もう、このベンチであなたと並んで座ることはない。私の隣にあったはずの未来は、葉の隙間からすり抜けて消えていった。──クローバーは、一瞬の幻だったのかもしれない。それでも、あの日見た光のハートだけは、心に焼きついたまま離れない。---(みっちーサイド)告白……緊張する……今日は早めに公園へ行こう。鏡を見て身なりを整え、髪型バッチリOK。よし行くか!の前にもう一度鏡で確認……今日の自分の格好がいつも以上に気になってしまう。今度こそ出発!家を出て、いつもの公園へ向かう。あと10分ほどで公園につく。いつも以上に心臓のドキドキがはやい。あとはこの道を真っ直ぐ行けば公園だ。しかしその途中、僕は倒れて、病院に運ばれていた。医者には余命が短いことを知らされた。頭が真っ白になった。何も考えられない。ただ彼女の事だけは頭の中でぐるぐるぐるぐる。彼女に悲しい思いをさせてしまう。迷惑かけてしまう。そう思った時には、本当は言いたくない言葉を送っていた。「もう会わない方がいい」---(あおサイド)“メッセージの送信に失敗しました”何度送っても、同じ表示。せめて理由が聞きたかった。「会わない方がいい」──その言葉の意味を。私、何かしてしまったのだろうか。言い訳も聞きたくないほどに、嫌われてしまったのだろうか。答えのない問いが、夜ごと胸を埋め尽くす。眠りかたを忘れ、食べ方も忘れ、笑い方さえ忘れてしまった。気づけば、目の前にはあのベンチ。近づくこともできず、離れることもできない。私はあの日のまま、時を止めてしまった。記憶の中には、鮮やかに色づくいちょう並木。けれど現実に広がるのは、色を失った世界と、灰色に沈むいちょう。あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。声を失った私は、泣き叫ぶことすらできない。私が何をしたの?ごめんなさい、ごめんなさい……助けて。会いたいよ。声にならないその想いは、秋の風に舞い上がり、金色のいちょうに溶けていった。#灰色のいちょう#届かない声#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸🎼編集後記🎼(みっちー)今回も私が撮った写真からの物語合作でした!ちょうど仕事の忙しいのと重なったり体調不良だったりと、あおさんをかなり待たせてしまったので、深くお詫び申し上げます!🙇♀️🙇🏻♂️🙇🏻♀️🙇♂️🙇🏻♂️🙇🏻🙇🏻♀️今作はちょっと切なくなってます!考えながらちょっとセンチメンタルになったりしてました笑拙いとこがあるかもしれませんが、読んでいただけたら幸いです!あおさん、ありがとうー!!!(あお)みっちーとの合作第3弾も、前作「歩幅」と同様、みっちーの撮った写真から生まれた物語です。みっちーの撮った写真は、とてもきれいで、切ない写真が多く、実は前作のようにハッピーエンドにする方が難しく感じました。今回は、とことん地獄のような切なさを描いてみました。みなさん大丈夫ですか?(笑)最後まで読んで下さり、ありがとうございます。