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優希が病院に
搬送されたと知ったのは
学校に駆けつけて
一時間も経過した後でした

崩れ落ちそうになる体を
周りの人が支えてくれました
救急隊員の配慮で救急車に乗り
優希のいる病院に運ばれました

ようやく通された処置室には
すでに事切れた優希が
静かに横たわっていました

その顔は微笑んでいる
ようにさえ見えました
まだ温かみの残る優希の体を
何度も何度も子守唄を
歌いながら擦すり続けました

何日か経つと
少しずつ事件の詳細が
明らかになっていきました

そこで分かったのは
傷の深さから間違いなく即死
だと思われていた優希が
最後の力を振り絞って
廊下を歩いていたことでした

教室を出て 血っ痕を辿りながら
倒れた場所まで歩くと
私の歩幅で68歩

その廊下には優希の流した血が
血だまりとなって
黒く染み付いていました

誰も助けの来ない廊下を
どんな思いで歩き続けたのでしょう

その姿を想像すると
胸が張り裂けそうでした
親として優希の悲しみや
苦悩を少しでも分かってあげたい

それから何度も訪ねては
優希の思いを
感じ取ろうとしたんです

精神的な瀕死状態でした
目に見えるものは灰色に見える
匂いも感じられない
音もぼんやりとしか聞こえない
触ても固い冷たいなど分からない
五感が麻痺してしまったのです

何も感じなくなりました
これ以上刺激が加わると
壊れてしまう…おそらく自分の命を
自分が守っていたのかもしれません

それからしばらくして
私は不思議な体験をしました

優希が歩いた学校の廊下を
いつものように訪れていた時
笑顔の優希が
私に向かって走ってきたのです

"ママ!"と叫びながら
走ってきた優希を"よく頑張ったね"
と力強く抱き締めました

それまで娘の苦しんでいる
顔しか思い浮かばなかったのに
いのちと命が呼応したように
会うことはできないけれど
娘とは繋がっている…
そう感じました

その時 娘の思いや願いが
無音の言葉になって
心に響き伝わってきたのです


命の価値は長い短いではなく
自分の命を精いっぱい生きること
人生をどう歩むか…そこに
命の価値があるのではないかと

その時に誓いました
辛いけれど優希が最後の力を
振り絞って歩いた68歩

私も同じように生きていきます
神様どうかお願いします
優希と一緒に手を繋いで
69歩目を歩ませてくださいと

#池田小児童殺傷事件
#本郷由美子
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