#GRAVITY百物語#怖い話「側溝」①私が大学生で、一人暮らしをしていた時の話です。当時私は貧乏学生で、住む場所にはお金をかけられませんでした。大学からは少し距離があり、学生からは〈三之町迷路〉と呼ばれる地域の格安アパートに居を構えた私は毎日夜遅くまでアルバイトをしていました。〈三之町迷路〉とは、迷路のように入り組んだ道が続く地域で、一本道を間違えると目的地に辿り着けないような、なんとも複雑な造りでした。そんな〈三之町迷路〉のど真ん中に、そのアパートはありました。敷金礼金無し、家賃月16,000円…六畳一間、お風呂トイレ共同のボロアパートは、見るからに訳アリ物件でしたが、背に腹は代えられません。家はどうせ、寝るために帰るだけなのです。あの日はそう、いつものように夜遅くまでアルバイトをして、終電に乗りました。〈三之町迷路〉からは、最寄り駅が二つあります。どちらの駅からもアパートまでは徒歩で25分ほどかかるのですが、当時私は必ず大学側の駅で降りました。一つ先の、もうひとつの駅は、降りてからアパートまでの道のりにほぼ人がおらず、街頭が暗く、川沿いなのでなんとも言えない不気味さがありました。学生の間で「あの川と〈三之町迷路〉は、異界だ。」とまで言われていましたから、私も避けていたのですが……その日は疲れていて、ウトウトと寝過ごしてしまい、慌てて降りた駅が川沿いを歩く、その駅でした。(うわ、誰もいないし、真っ暗だな……。)駅から出た途端、腕にまとわりつくような、湿気を感じました。川沿いだからか、ろくに手入れのされていない雑草の生えた道だからか、なんとなくジトッとしています。夏の終わりが近付いていましたが、歩き始めるとじわりと汗がでました。それでも秋の虫が鳴く声を聞きながら、川沿いを……なんとなく川の方は見ずに歩きます。足取りは無意識に速くなりました。バシャッ時折川から、大きな水音がします。(魚が跳ねているのかな。結構大きなのが、いるんだ。)#本当にあった怖い話#私の実話シリーズ#残り93話