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けんつう
雲に届きそうな高さにある頂上まで、はしごを登って、さあ滑ろうと思ったけど、あまりにも高くて怖くなってきました。しばらく滑り台に座って手すりを掴んでいると、後ろから誰かが登ってきました。
「何してんだよ」
登ってきた人が言いました。
それで少し振り返ると、怖がっているような顔をしてたのがわかったのか、その人は笑いました。
「自分も最初は怖かったけど、泣くほどではなかったなぁ」
自分でも気づかないうちに怖くて涙を流していたようでした。
服の袖で瞳を拭って、改めて後ろの人を見ると、その人は笑ってこう言いました。
「目を瞑ってもいい。とにかく滑り始めれば、気がつけば下についてるよ。いいんなら、俺が背中を押してやるよ。」
私が首をプルプル横に振ると、その人はまた笑いました。
このままだとイタズラに背中を押さそうだと思い、滑り台に向き直し、手すりから手を離そうとしますが、やはり中々決心がつきませんでした。
すると、後ろの人が私の背中に手を当てました。
「大丈夫。」
その人は私の背中を押すでもなく、ただ背中に手を当て続けてくれました。だんだんその人の手の形に、背中が温かくなって来ました。
その温もりに安心し、私はゆっくりと手すりから手を離しました。
するとその人はグッと私の背中を押しました。私の身体は勢いよく滑り台を滑り降りていきました。
怖くて目を瞑りながら滑って、あっという間に地上に着きました。
脚で地面を踏みしめ、地上に着いたことを安堵しながら立ち上がり振り返ると、そこには滑り台は無く、代わりに一人のお爺さんが立っていました。
「あっという間だっただろう?」
その一言で、このお爺さんが僕の背中を押してくれたあの人だと気付きました。
「もう終わりなんですか?」
「ああ、君の番はもう終わりだ。でも代わりに次の奴がやって来るから、そいつの面倒を見てやってくれ。」
お爺さんが私の後ろを指差したので振り返ると、私と同じような背格好の男の子が滑り台のハシゴを登り始めるところでした。
私は、その子が登り始めたのを確認し、後を追うように私もハシゴを登り始めました。
さっきと同じ高さの滑り台なのに、さっき登った時よりも、滑り台はすごく小さくなったように感じました。
#架空日記
けんつう
その日にしかできないから、それまでに家族全員色々食べて太るようにしてる。
食卓を囲んで恒例「誰の肉が一番美味しいか」を決めた。
結果は今回もやっぱりお父さん。タバコ吸ってるからか、香ばしい香りがして、良いんだよなぁ…
#架空日記
けんつう
冷たい河の中を渡っていくと、岸に草で隠れた小さな宝箱があった。
箱を開けると、忘れていたあの人の匂い。
中には、あの人が身につけていた指輪が転がっていた。
その指輪を手に取り、ギュッと握ったあと、私は河の向こう岸に向かって投げた。
夏の太陽に晒されて、その指輪はキラキラと舞い、浅葱色の水の中に消えた。
あの日感じた貴方への憎しみが、少しだけ溶けていった気がした。
#短編小説 #架空日記
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