『終わらなかった別れ』一風がひとすじ、 窓辺をかすめていった。 それは、 誰にも呼ばれなかった声のように、 ただ、 空白の中へと消えていった。 二言葉は交わされなかった。 沈黙だけが、 私たちのあいだを ゆっくりと閉じていった。 まるで、 誰もいない部屋の扉が、 風に押されて 静かに閉まるように。 三赦しも怒りも、 沈黙のなかで、行き場を失っていた。 それらは、 未明の光のように、 輪郭を持たぬまま、 私の胸の中を、 ゆるやかに漂っていた。 四私は、静かに離れた。けれど、 その静けさには、 言葉にならなかった響きが、胸の底に、かすかに残っていた。それは、 闇の底で微かに揺れている、 消えきらぬ灯のようだった。 五未完のままの別れは、 終わりではなかった。 終わらせられなかった、 私の中の、あなたの影だった。 六私は、今日も名を呼ぶ。 答えのない空に向かって。 その不在を、 確かめるように。 それは、 祈りというにはあまりに遅く、 忘却というにはあまりに鮮やかだった。 #自由詩 #未完了の喪失