#SUPPART#Seaart#漢詩#方岳#雪梅方岳は、農民の家に生まれた。だが学問をおさめ、科挙に合格し、官職に就いた。しばらくは南宋の都・臨安で官職を務めていたが、地方へ赴任することになった。刺史――つまり、その地方では一番偉い、ということになる。まあ、地方へ左遷されたと言えなくもない。何かまずいことをしただろうか。あれかな、これかなと考えたこともあった。人の恨みを買うような真似だけはしていない。その点は少しばかり自信があった。けれど、落ち着いてみると、ここも悪くない場所だということが分かってきた。江南の片隅とはいえ、視察と称して、あちこちを見て回れるのも悪くない。都では決して見ることができない美しい景色もたくさん見た。そう思える程度には、この地の空気に、もう慣れていた。この地方は、雪が降ると聞いていた。だが、いくら待っても空は沈黙したままだ。寒さだけが先に来て、梅だけが、なぜか先に咲いている。こんなにも冷えているのに、なぜ、雪だけが降らないのだろう。そう思って空を見上げたとき、白い何かが、方岳の横を通り過ぎた。それが雪の精かどうかは、分からない。けれど、地方を巡るうちに、こういうものが時々見える目を自分は持っているらしいということをはじめて知った。ああ、きっと、明日あたりに雪が降る。梅は、もう咲いている。雪は、まだ、降らない。そのどちらも、完全ではないまま、空の下に並んでいる。その瞬間、「雪梅」という二文字が、静かに胸に浮かんだ。――雪が降ったら、詩を書こうか、方岳は思った。