神社の裏手、しんと冷えた竹林の奥にひとつだけ阿弥陀如来の石仏がある楓は夕暮れ、そっとその前に立った悔しさではない怒りでもないけれど、何かが自分の中に刺さったまま動かない「わたし、間違ってたのでしょうか」誰にも聞こえぬように、唇をわずかに動かしてそうつぶやいたとき阿弥陀さまが、ゆっくりと首を傾けてこう言った「まかせんしゃい」ぽかんとした楓に仏は続けた「怒るなとも、嘆くなとも言わんよただ、あれはあれで、いっぱいいっぱいじゃったのさ」「......わたし、正しくあろうとしただけなのに」「そうじゃの。そなたは“道”を行こうとした。だがのう、“道”は時に、ひとりで歩かねばならん」「では、分かり合うことなんてできないのでしょうか」仏は微笑んだふくふくとした頬が、月光に照らされる「分かり合えんことも、ある。けれどな、“分かろうとした心”は、ちゃんと届いとる」「……どこに?」「このわしの懐にな」楓は泣いたぽたぽたと、土に落ちて染み込む音がした「心が汚れたような気がしてたけれど」「それは成長じゃ。お汚れではない」「でも、寂しいです」「寂しゅうてよか。人は寂しさで、やさしゅうなるけん」阿弥陀如来は目を細め、静かに言った「そなたはよくやったあとは……わしにまかせんしゃい」その夜、楓は夢を見たあの男が石段をのぼり、静かに手を合わせていたそして、阿弥陀如来像はまっぱだったおしまい(笑)#慈悲のフルスロットル#ノーガード戦法#ことばりうむの星#モ!#わかりあえない人の創作への返歌