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陽炎
#悩み多き感情たちの詩
喜 と 楽 問題
喜びくんは密かに悩んでいた
ボクは嬉しいから喜ぶ
笑顔になる
けど よくよく考えると嬉しいってなんだ?
楽しい子ちゃんがいつも云う口癖
楽しいってシアワセ
シアワセがいつだって
わたしを笑わせてくれる
笑う門にはなんとやらって
ほんとそれ
笑ってシアワセでいられるなんて
こんなに嬉しいことはないわ
って
てことはつまり
楽しい子ちゃんが嬉しいを生み出してるってことなのか
楽しい子ちゃんがいなけりゃ
ボクも存在してないってことなんじゃ?
喜びくんの悩みは尽きない
夜はまだまだ長い

陽炎
#悩み多き感情たちの詩
涙は一体誰のもの
ある日の真夜中のことでした
感情たちが一同集まって
涙は一体誰のものかという議論になりました
開口一番に手を挙げた悲しみちゃん
そんなの私のものに決まってるじゃない
すると横から淋しがり屋くんがすかさず手を挙げて
いやいや ボクのものに決まってるじゃないかと
わたしのものよとツライちゃん
ボクのものだと苦しみくん
もしも涙が他の誰かのものだったら
この先どうやって生きていったらわからないと嘆きはじめる不安がりちゃん
誰もがこぞって自分のものだと云って譲りません
そのうち怒りんぼくんが突然怒りだしました みんなの主張は解らなくはない
悲しみちゃんにしても淋しがり屋くんにしても
ツライちゃんにしても苦しみくんしても
不安がりちゃんしたって
涙はクスリみたいなもので
なくてはならない必要なものだってのはよく解る
けどさ 楽しがりちゃんや喜びくんまでもが
自分のものだって主張するのはなんか違わないか?
楽しがりちゃんも喜びくんも
他にたくさん持ってるじゃないか
笑いとかドキドキワクワクした気持ちとか
フットワークの軽さとかさ
それなのに 涙までも自分のものにしたいなんてズルいよ不公平だよ と
やさしさちゃんが静かにそっと
割って入ります
まぁまぁ 怒りんぼくん落ちついて
こういうときはやっぱり
平等に分け合うっていうのはどうかな
誰かひとりのものって決めるんじゃなくさ
なくなったらまたすぐ補給すればいいんだもの
それでも足りないときは
私の分の涙 あげるから
ね そうしよ
デジタル電波時計が
ちょうど午前3時33分を示していました
ねぇ 話してたらなんかノド渇かない?
今からみんなでコンビニに
飲み物でも買いに行こうよ
ポカリかアクエリがいいかなやっぱり
涙とほぼ成分一緒だし
あ 私ほっとレモンが飲みたい気分

陽炎
#悩み多き感情たちの詩
届かないSOS
滅多に弱音を吐かない我慢くんが
ある夜もう無理 限界かもしれない
助けてください、と仲間たちに電話を掛けました
誰もがあの我慢くんが助けを求めるなんてと
驚き戸惑いを隠せませんでしたが
口々にこう云って慰めました
大丈夫だよ我慢くんなら
きっと乗り越えていけるよ
ダメだなんて決めつけたらダメ
キミは弱くない 強い子なんだから
気持ちをしっかり持って
大丈夫大丈夫
それよりさ 聞いてよ
この間めちゃくちゃイヤなことがあってさぁ
助けを求めたはずの我慢くんのSOSは
いつの間に 仲間たちのSOSに取って代わられてしまいました
我慢くんは深く深くため息をつきました
本当にどうしょうもなく助けてほしくても
結局また 我慢するよりほかないのか
仕方ない 仕方ない
これがきっとボクの運命なのだ
誰に聞こえるでもなくそう呟いて
無惨にも空に飛ばされて砕け散っていったSOSを
いつまでも いつまでも
諦めきれない目で
追うばかりなのでした

陽炎
#悩み多き感情たちの詩
フタなんて出来やしない
好きっていう気持ちは
どうしてこんなに臆病にしてしまうのだろう
傷つきたくない嫌われたくない傷つけたくもない
あの笑顔が壊れる瞬間の
あの感じがたまらなくコワくて
でも好きは止められなくて
あふれないようにこぼれないに
そ~っとそ~っと
あ~あ
ほらまたこぼれちゃった

陽炎
#悩み多き感情たちの詩
疑いようもないわたしたち
素直ちゃんは疑うということを知りません
小さい頃 両親がいつも互いを罵りあっていて
次の朝にはいっつも
お父さんとお母さんは仲が悪いわけじゃないんだと
何もなかったかのごとく トーストを齧っていても
一度だけ お父さんお母さん それに弟と
遊園地に連れて行ってもらったことがあって
楽しくって楽しすぎてついついはしゃいでしまい
お母さんがせっかく買ってくれたソフトクリームを落っことしてしまいました
お母さん また買ってきてあげるからここで待ってなさいって云って
弟の手を引いて行ったまんま
二度と戻っては来ず
ぽつんと置き去りにされてしまっても
お父さんと二人きりになって
お父さんに新しい女の人が出来ても
あんまりかまってはくれなかったけど
忙しくってそれどころじゃないって
素直ちゃんは何も疑いもせず
ただ素直にその状況を受け入れていました
息を吐くように嘘ばかりついている嘘つきくん
保育園のときからのたったひとりの幼馴染で
とても仲が良かったのですが
何も疑うことを知らない素直ちゃんを
いつもからかっては
嘘つきくんは面白がってばかりいました
けれども素直ちゃんは
そんな嘘つきくんの嘘もからかいも
嘘だとは面白がってるなんて
疑がいもしないのです
何故かと云うと
嘘をついている嘘つきくんその人自身は
本当だとわかっているから
なのでした

陽炎
#悩み多き感情たちの詩
イライラくんの憂鬱
イライラくんと怒りんぼくんはいつも一緒なので
誰からも仲がいいと思われていた
けれども本当は
イライラくんは怒りんぼくんがあまり好きじゃなかった
すぐに怒鳴るしモノにあたっては壊したり
誰かにヒドイコトバを投げつけたり叩いたり
怒りんぼくんがこうなるのは
全部イライラくんのせいだって
イライラを抑えられないからこうなるんだ
と云ってボクが悪いみたいにしてしまう
怒りんぼくんのせいでボクはこんなにも
イライラしてしまうっていうのに
全部ぜんぶ怒りんぼくんが悪いのに
怒りんぼくんのせいなのに
けれどもどうしても
どうしても キライだとは
あっち行けとは云えなくて
もう遊ばないよ とも云えなくて
今日もこうして 怒りんぼくんの家で
カラムーチョ食べながら2人して
Switchに熱中しちゃってるっていう

陽炎
#悩み多き感情たちの詩
やさしさちゃん
やさしさちゃんは家に帰ると
いつもぐったり疲れている
ベッドに倒れ込んだら
着替えるのもメイクを落とすのも
もう何もしたくなくなってしまう
やさしさちゃんはみんなにやさしいから
みんなに頼りにされている
やさしさちゃんは弱音を吐いたりしない
愚痴も悪口も誰も聞いたことがない
やさしさちゃんは本当にやさしい
誰に対してもやさしい
自分自身以外には

陽炎
#悩み多き感情たちの詩
怒りんぼくん
怒りんぼくんはみんなの嫌われ者
だからいつだってひとりぼっち
誰にも知られずひっそりと涙を流すも
そんなことはもちろん誰も知らない
時々淋しがり屋くんがそっと近寄ってきては
そっと寄り添ってくれたりするんだけど
何が気に入らないのか
すぐに怒って蹴散らしてしまう
だから怒りんぼくんはみんなの嫌われ者
誰にも理解してもらえない
だからいっつもひとり

陽炎
#悩み多き感情たちの詩
からいツライ
ねぇねぇツライちゃん
ツライちゃんってカラいもの好きなの?
カレーだったら何カラ?
ハバネロとか激辛とか平気だったり?
デスソースとか掛けちゃったり?
ツライちゃんはちょっと困った顔をして云いました
あたしってもひとつの呼び名が辛いだから
そう思われがちなんだけど
ホント云うとね カラいって味覚はなくて
あれは痛いって感覚なの
カラいもの食べて痛かったら
そりゃぁツラくもなるでしょ
ね そうは思わない?
って
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