《合作作品》@みっちー ×あおのハーモニー「カレーのある風景 〜猫は知っている〜」(みっちーside)仕事が終わり、家に着き、玄関の扉を開ける。食欲をそそる、スパイスの香り。「今日はカレーか!」「ただいま!」この一言で、振り向く彼女と猫。「おかえり!」「先にお風呂にする? ご飯にする? それとも私?」俺はそれを華麗にスルー。そう、カレーだけにね。ちゃんと後で全部いただきますけれどね?それはさておき、帰ってきて一番最初にすることといえば、猫におやつをあげること。もうすでに、足元にちょこんっと座り込んで、こちらを見上げている。「にゃぁん」「はいはい、今あげるから待ってね」俺の手のひらを、これでもかというほど舐め回す猫。そうそう、この時間こそが癒しだ。猫は食べ終わると、すぐに窓際に向かい、外を眺めていた。「ご飯の準備できたよ!」彼女から声がかかる。「いただきます」二人で並び、テレビを見ながら、他愛ない話をして、カレーを食べ始めた。「ッ?! かれぇ?!!?!」今日のカレーは辛口だった。彼女は言った。「カレーは、かれー!笑」---(あおside)「ただいま〜」玄関の扉を開けると、ふわりと漂うスパイスの香り。その匂いと同時に、足元にちょこんと現れる猫。そして、キッチンから顔を出す彼。「おかえり」「ご飯できてるよ〜」その一言に、ふっと肩の力が抜ける。「先にお風呂にする? ご飯にする? それとも──」そう言いかけると、彼が言った。「今日は、ぜんぶ後まわし。まずはこのカレー、食べてほしいんだ」彼がエプロン姿で、照れたように笑う。その後ろで、猫が「にゃぁ」と相づちのように鳴いた。テーブルに並べられた、あつあつのカレー。トマトと玉ねぎがとろけていて、見るからにやさしい味がしそう。「いただきます」一口食べて、私は思わず首をかしげた。「……あ、甘っ!」思わず笑ってしまうほどの甘口。まるでデザートみたいなカレー。「やっぱり? ちょっと隠し味、入れすぎたかも」彼は少し恥ずかしそうに言う。「何入れたの?」「君のこと考えながら作ってたら、気づいたら……はちみつ、3周くらい回してた」「そりゃ甘いわ」「君が笑ってくれるなら、それでいいかな」そう言って、彼はスプーンを片手に、にっこり笑う。猫はテーブルの下でごろりと寝そべって、その空気を読んでるような、読んでないような顔。ふたりで顔を見合わせて、「ふふ」と笑ったその瞬間、世界が一段、やさしくなった気がした。テレビもつけず、スマホも見ず。ただ甘すぎるカレーと、甘すぎる時間に包まれて──「ねぇ、次は一緒に作ろっか」私の言葉に、彼と猫がそろってこちらを見る。それだけで、今日はもう、充分だった。---(みっちーside)あいしてるいとおしいのよきみがいつまでもちかうよげんきでいるときみのそばで---(あおside)ほんとうはね、しずかに想ってるだけでよかった。ふりかえるたびに、君がいたから。るんと心が弾むのも、君がくれた魔法。よるがふけても、想ひ浮かぶのは君。るり色の夜空にも君の笑顔だけ浮かぶ。のこり香みたいに、胸の奥にそっと。あいたい気持ちは、ふくらむばかりで。いつしか私の世界の光になった。こいってこんなに静かで優しいんだね。ときを越えても、きっと私は君を選ぶ。ばしょはどこでもいい‥君のとなり──それがわたしの帰る場所。---(みっちーside)〜手紙〜元気にしてる?ちゃんとご飯たべてる?仕事忙しくても、ちゃんとたべるんだよ?すぐ食べれるように、レトルトカレーとかカップ麺いれてるから。たまには、うちに帰ってきなさいね。---母親には、全部お見通しのようだった。「来週の休み、久しぶりに実家に帰るか」夢の中のようにカレーを作ってくれるような彼女なんていないし、もうしばらくは、家族との時間を大事にしようと思った。枯れーる前に相手が見つかるといいな。カレーだけにね。……自分で言ってて、辛(つら)いね(笑)「なんて、妄想ばっかしてないで、そろそろ仕事行かないとなぁ」妄想のような相手はいない。でも今は、できることをやっていこう。俺の仕事は、荷物の配達。今日も、いろんなお家に届けに行く。「ん、配達はここのお家だな」荷物を届けるために、呼び鈴を鳴らした。ピンポーン──。---(あおside)「おまえの作ったカレーが食べたい」そう言われたのは、いつだったか。「お友達も一緒にどうぞ」「いや、俺もまだ食ったことないのに、あいつにはもったいない!」そんなやりとりを思い出す。結局、カレーを食べてもらえることはなく、私たちは終わった。暑い中、愚痴ひとつこぼさず、淡々と働く彼が好きだった。彼が少しでも心地よく生きられるように、私の全力で労らせてほしかった。「おいしい」「お風呂気持ちよかった」彼の快適を整えて、彼が笑顔になるのを見たかった。彼のそばで、生きたかった。一人暮らしも長くなると、誰かの「おかえり」が恋しくなる。だから今日も──猫とカレーと、少しの妄想で、生き延びている。ピンポーン。「あれ? 何か頼んでたっけ? ……はーい」---#荷物がつなぐ物語#傷心のふたり#幸せな妄想#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル~○~○~○~○~○~○~○~○~編集後記 〜カレーのあとに〜(みっちー)うーん、合作って初めてで。今までは、自分の書きたいことをただ殴り書きする感じだったけど、あおさんサイドの描写で、しっかりストーリーができていくのが本当にすごいと思った!一人でやってたら、ただのアラサーの妄言になってたな〜笑---(あお)みっちーがこの星に降り立ったあの日の衝撃は、今でも忘れられません。マスカットに愚痴寿限無──太刀打ちできなかった。圧倒的な敗北感。創作は戦いじゃないけど、みっちーの作品にのっかってみたいのに、“手も足も出ない”。そんな感じだった。今回、「合作しよう」と声をかけたのは私から。ほんとはね、みっちーワールドに翻弄されてみたかったの。だけど──「とりあえず何か投げて」の無茶振りに返ってきたのは、あまりにもかわいい、きゅんきゅんなカレーのお話。その瞬間、一気にラストまでのイメージが湧いてしまって。みっちーワールドで踊るつもりが、気づけば、あおワールドに連れてきちゃってました(笑)忙しいお仕事の合間に、このわがまま企画を快く引き受けてくれたみっちーには、感謝しかありません。みっちー、本当にありがとう!そして実は──今回の投稿に添えた、夕陽を閉じ込めたような幻想的な一枚も、みっちーの作品なんです。文章だけじゃなく、写真にも命を吹き込めるなんて……もう、ほんとに多才すぎて尊敬しかない!うーん、やっぱ完敗!(笑)さらに今回、途中に登場する“あいうえお作文”は、みっちーの投稿に、私が返歌として綴ったもの。物語にぴったりだなと思って、そっと差し込んでみました。──みっちーとあおの音色、いかがでしたか?