欠けても愛しいおさら【書き直し】-----夜の台所で、お気に入りのお皿を洗っていた。つるんと指がすべって、白いお皿が床に落ちる。カラン、と音がして、ひとつぶんだけ、かけてしまった。あああ……って思ったけど、ふしぎと、そこまで悲しくはなかった。何度も使って、何度も洗って、いっぱい思い出をのせてきたからだろうか。その小さな欠けは、なぜか「よくここまで一緒にいたね」って言ってくれてるようにも思えた。テーブルに戻すと、かけたところだけ光って見えた。まるで、まちがえて咲いた花みたいに。だから今日は、そのお皿に、あたたかいスープをそっとのせた。欠けたままでも、ちゃんと使える。欠けたからこそ、ちょっとだけ、愛おしい。#寝る前に読みたいお話#そうの思考整理