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風ささ
帰る家もない とり残されて
僕一人だけ 真っ赤な
真っ直ぐな道の 途上
そのままの寂しさに 火を点され
蝋燭のように 夕日に
火を点されて 燃え上がりそうで
遠く 農家の窓辺の灯り
それよりも温かい 居場所をくれる
あなたの瞳に 痛いほど
会いたかった

風ささ
麦畑に寄せる 夕日のさざ波が
金色の 寂しい風をつれて
地上を 焼き尽くそうとする
すべては 自分のねぐらに
地を這うものは 土に伏し
花は顔を閉じた 草は黙り込んで
小鳥は寄り添い 安らかに眠るだろう
暖かな羽毛に 見る夢は
星の静寂に 守られた夜を

風ささ
空一面が夕日に燃えている
焼き尽くされた街は
はかなく消えてしまった遺跡の
淡い語り口の物語のよう
こんな寂しさには あなたと
手をつないで 歩いてゆこう
闇に姿を奪われる夜には 力をこめて
僕はあなたと一緒にいたいから
寄り添う心のままに どこまでも

風ささ
今日も足早に 終わってしまう一日の
とりとめもない言葉を 胸の内から
焼き尽くして 黙らせる夕刻
なにか寂しく笑うことしか できなくなる僕を
通りすがりの自転車に 追い越されながら
待っているあなたの側へ

風ささ
買い物帰り 小さな荷物を手にさげて
赤く錆びついた都会の川に 石を投げる
退屈な音を立てる水面
水しぶきを立てた後にはまた
柳の影を下流に引っぱる遊びに耽る

風ささ
今日かわした言葉の
いくつがあなたの 夕暮れていく胸に
流れただろう どんな音を立て
あなたは今日も 楽しくいられただろうか
あなたは 素直にうなずくけれど
いつも 自信がない僕は
少しすねた 子供を真似るように
それを信じられずに
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