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読書記録です。
病が分断するアメリカ
ー公衆衛生と「自由」のジレンマ
平体由美 著
ちくま新書
本書は、米国の公衆衛生の歴史の専門家が、コロナ禍が可視化した米国の公衆衛生のジレンマを、20世紀初頭以来の公衆衛生史をみていくことで、社会格差・地域格差・人種格差などによって分断された米国の問題を追求したものです。
米国は先端医療や医薬品開発では世界のトップを走るにも関わらず、G7の中では平均寿命が低く、乳児死亡率が高い。この歪さはどこから来ているのか。米国の経済成長をもたらしてきた自由は、一方で豊かさを実現し人々の健康状態を改善したが、他方で「自分たちのことは自分たちで決める」という自由の伝統を盾にして、公衆衛生の介入を困難にし、疾病予防に遅れをとったと述べられています。
米国の場合、特徴的なのは社会経済的地位の違いにおける分断です。ただ昔から研究対象にされてきた都市スラムの住民よりも非都市部、すなわち西武山岳地帯やステップ地帯、南部農村地帯、北部のかつての工業地帯などにおける貧困はさらに深刻になっていると述べられています。
現代の米国では少なくとも140万人が屋内の水道設備、つまりシンクやシャワー、水洗トイレを持たずに生活していると推定されています。彼らは水をタンクで購入するか、井戸を使用することになりますが、全米地理調査によると、実際に住民が使用している井戸の23%で、健康被害が懸念されるレベルの大腸菌やヒ素、硝酸塩、ウランなどが検出されるという衝撃の実態があるそうです。
社会経済的地位が低い人々が多い地域は、科学的情報のリテラシーが低く、地域として十分な公共インフラと医療インフラを持たず、それらを改善するための政治的意思も財政的裏づけも低く、GDPは圧倒的に世界一である国が公衆衛生上の危機を抱えている地域を抱えているという国の構造の歪さを明らかにしています。
公衆衛生の切り口からみた「米国の今」を知ることができる本です。
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