元町中華街に関するコミュニティ投稿【2025】|夜の繁華街,ゴールデン中華三昧-Gravity SNS

【春、ほどける心】

元町の街は、春の陽に包まれていた。

石畳の道を歩きながら、僕は隣の菜月をそっと見た。
桜の花びらが、菜月の肩にふわりと落ちる。

「ついてるよ」

そう言って、僕は指でその花びらをつまみ取った。
触れた指先が、ほんのり熱を帯びる。

「ありがと」

菜月が微笑んだ。
その笑顔が、春の空よりもずっと眩しい。

「こっちの道、久しぶりだね」

菜月が言った。
細い路地に並ぶカフェや雑貨屋は、大学時代によく歩いた道だ。

「覚えてる？あのカフェでさ、君が……」

「あっ、やめて！あれは恥ずかしい！」

菜月が頬を赤く染め、僕の腕を小突いた。

「いやいや、あれはすごかったよ。『おすすめは？』って聞いたのに、全部頼んでたもんね」

「だって、あの日はなんか、楽しくて」

「今日も楽しい？」

僕の問いかけに、菜月は少しだけ俯いてから、ふっと目を細めた。

「うん。楽しい」

その言葉が、心にぽっと火を灯す。

「ちょっと待って」

坂道の途中、菜月が僕の袖を引いた。

「なに？」

「えっと……ここ、ちょっと入ろう？」

そこは昔、2人で通り過ぎただけの雑貨屋だった。
中に入ると、柔らかい音楽とアロマの香りが漂う。

「ほら、これ」

菜月が指差したのは、アンティーク調の小さな時計。
文字盤の中に、金色の桜が彫られていた。

「これ、かわいいね」

「そう思ってたの？」

「うん。昔からずっと」

菜月が、その時計をじっと見つめたまま言った。

「……昔からって、いつから？」

「うーん……」

菜月が答えないまま、肩をすくめる。

「……まぁ、ずっとかな」

その声が、小さく心をくすぐった。

夕方、帰り道。

「また来ようね、元町」

「うん、次はどこ行く？」

「……桜が散る前にさ、また一緒に歩きたい」

菜月が、ふと僕の袖に指を絡ませた。

「……陽太」

ふいに名前を呼ばれて、胸がぎゅっと締め付けられる。

「なに？」

「……なんでもない」

そのくせ、菜月は僕の手をぎゅっと握ったままだった。

坂の上から吹く風が、2人の間に舞い落ちた。
散る桜の花びらが、手のひらにそっと落ちる。

「……今日のデート、楽しかったね」

そんなデートができるような人に私はなりたい

#元町中華街
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