#会話劇 #哲学 #halnaの脳内 夏芽「…ということがあったんだよ」皐「なるほど」夏芽「皐。キミははさっきから一度も私の顔を見ていないね。こちらを向きもしない。話している間、私が何度変顔をしたかわかるかい?」皐「何度だ?」夏芽「一度もしていない」皐「そうか。僕はあいにく、人の顔がわからないのでな。表情さえも全く読み取れないんだ、顔を見るなど無駄な行為にすぎん」夏芽「それでもこちらを見ていればいいじゃないか」皐「それに何の意味があるというんだ。考えてもみたまえ。君は目の見えない人にも『こちらを見て話せ』と言うのか?つまるところ、君は外見から分かる障害か否かで態度を変え、理不尽な要求をしているということになる」夏芽「その理屈はわからなくもないけどねえ。でもキミは、顔に関する情報を受信することはできなくても発信することはできるだろう?」皐「どういうことだ?」夏芽「キミは目が見える。相手の顔の位置を正確に把握できるんだ。だったらそこへ視線を向けて、ちょっと微笑んでみせることもできるということだよ。それは立派なコミュニケーション術の一つだ。キミは何も読み取れないかもしれないけど、相手はそうじゃない。難聴の人だって、自分は聞こえなくても聴者には声で喋りかけることがあるはずだよ」皐「…君はこちらの思いを何も知らないから、そういうことが言えるんだ」夏芽「お、ようやくこっちを見たね。言っておくけど、人の顔がわからないというのは私だって同じことだよ」皐「何だって?」夏芽「キミのように表情も顔のパーツすらもわからないという訳じゃないけど…私はキミの顔を一目見ただけで、それをキミだと認識できたことは一度もない」