こんにちは。読書しました。土と生命の46億年史土と進化の謎に迫る藤井一至 著講談社ブルーバックスまず、本書冒頭で、土とはなにかについて定義されています。土とは岩石が崩壊して生成した砂や粘土と生物遺体に由来する腐植の混合物である。この土をつくることがいかに難しいかということを250ページかけて語るのが本書のテーマとなっています。第一線の研究者による著作だけあって、新しい知見がいろいろ述べられており、勉強になります。第3章では、奄美大島において、ストッキングに詰めて森林の中に埋められた岩石粉末や火山灰が、40年の時を経て掘り出され、腐植によって「土のようなもの」に姿を変えていたという感動のエピソードが載っています。腐植とは実は枯葉の残骸程度のものではなく、半分は死菌体由来の物質であり、非常に多数の微生物によって分解されたものである、団粒構造になっているのは、ミミズが食べてフンをすることで出来上がったものであるそうです。第5章においては、フルーツの争奪戦に負けて、西アフリカの熱帯雨林から東アフリカの草原へと生活の場を変えたサルが人類の祖先であるという興味深い説が述べられています。幸運なことに新天地の東アフリカの草原地帯は肥沃な土地で、直立二足歩行で両手の自由を得た人類の祖先は、ユリ根を食べるようになり、どこでも生きられるように雑食性に進化したそうです。第7章においては、人工土壌を開発する可能性の展望を述べる一方で、都市部で問題となっている食品ロスによる食品廃棄物を発酵して生成されるメタンガスを火力発電に用い、できた堆肥を農業に利用するという循環型社会の可能性について述べられています。現代の人口爆発や、ニューヨークや東京といったコンクリートジャングルという名の廃墟の拡大は、人類滅亡への序曲であるという時代にあって、土と共に生きる生物としての原点を問うというのは人類の未来を問うことであるように思います。#読書 #読書感想文 #土 #人類 #人新世