国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。 向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落とした。雪の冷気が流れこんだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶように、「駅長さあん、駅長さあん」 明かりをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は、襟巻きで鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れていた。 もうそんな寒さかと島村はそとを眺めると、鉄道の官舎らしいバラックが山裾に寒々と散らばっているだけで、雪の色はそこまでいかぬうちに闇に呑まれていた。by『雪国』川端康成主人公(島村)に、雪国への到着を知らせたのは、窓の外に広がる景色でも、汽車のアナウンスでも無くて、見知らぬ娘さんが急に開けた窓から、ぶわっと入ってきた冷気でした🌨️この急展開に胸熱…✨#お気に入り名言 #名場面 #ひとりごとのようなもの #五感に仕掛ける文章 #ぶわっと寒くなる