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父は若いころに小説家を志して
いたというだけあって
日常のなかにいつもドラマを
探しているような人でした

子育てについても同じです
日常は心を育てるための物事に
あふれています

見逃したらもったいない…
父はかぎられた時間の中で
少しでも多くのことを体験させ
ようとしてくれました

私が小学校2年生のころ
道にお札が落ちているのを見つ
けます 額面は200円
最近はすっかり見ない百円札です

父は私の手を引いて交番まで
連れていってくれ
事情を説明するように促しました

簡単な書類にサインなどをしなけ
ればならないのですが
父はできるだけ私に書かせました

半年後200円は私のものになります 
父は言います "その200円どうする"
私が"うーん貯金かなぁ"というと

父から提案がありました…
それもいいけど 学級文庫の本を
入れるスペースがなくて
本立てが必要だって言ってたでしょ
それを買ってみたらどうだろう

お父さんが足りない分を出して
あげるから大丈夫だよ
きっとクラスのみんな喜ぶと思うよ

早速 担任の先生に事情を話して
本立てを購入し渡しました
クラスメートたちは素直に喜んで
くれたように思います

父はいつも命令はしません
このときも提案しただけです
私がお菓子を買うと言っても
叱りはしなかっただろうといます

ただ
わが子をよく理解している父は
私が提案に乗ってくることを
見越していたのだと思います 

本当に小さなエピソードですが
当時のこの思いは今でも胸の奥に
しっかりと残っています

お菓子を買えば忘れてしまう
エピソードでもドラマが演出されて
いるので深く印象に残ったのです
 
当たり前を当たり前と見逃さず
わが子とともにドラマを見つけだす
ことはとても豊かなことです
 
親のちょっとした提案が日常で
自然にドラマを紡ぐこともある
 
すると子供は何も教えなくても
何かを学ぶことがあるのだと
父との体験で私は知りました 

こうした記憶が
僕のことを考えてくれている
愛してもらっているという思いに
つながり自己肯定感を高める
助けとなってくれるのです

#七田厚
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