センティメンタリズム、リアリズム、ロマンティシズム …この三つのイズムはその何れかを抱く人の資質によって決定せられる。…或る人は過去に現れたもの、若しくは現わるべかりしものに対して愛着を繋ぐ。そして現在をも未来をも能うべくんば過去という基調によって導こうとする。凡ての美しい夢は、経験の結果から生まれ出る。経験そのものからではない。そういう見方によって生きる人はセンティメンタリストだ。…また或る人は未来に現われるもの、若しくは現れるべきものに対して憧憬を繋ぐ。既に現われ出たもの、今現われつつあるものは、凡て醜く歪んでいる。やむ時なき人の要求を満たし得るものは現われ出ないものの中にのみ潜んでいなければならない。そういう見方によって生きる人はロマンティストだ。 …更にまた或る人は現在に最上の価値をおく。既に現われ終わったものはどれほど優れたものであろうとも、それを現在にも未来にも再現することは出来ない。未来にいかなるよいものが隠されてあろうとも、それは今私達の手の中にはない。現在には過去にあるような美しいものはないかも知れない。また未来に夢見られるような輝かしいものはないかも知れない。然しここには具体的に把握されるべき私達自身がある。全力を尽くしてそれを活きよう。そういう見方によって生きる人はリアリストだ。 『惜しみなく愛は奪う』 有島武郎#小説 #有島武郎 #言葉 #リアリスト