イベント:Song to Story に投稿された @あお さんの作品、『アデリックペンギン』への返歌です。⸻『夢で逢えたら』静まり返った広場に黒衣の男がひとり佇む。「まぁ、こんなものかな。余興としては、なかなかに楽しめた」男は独りごち、ふと足元を見る。「特に、この青髪の女は面白かったな……気に入った」そう言いながら、黒衣の男は青髪の女に手を伸ばそうとした。そのときーー「セーブ・ザ・クイーン!」なにかが聞こえた。「ん?」男が辺りを見渡す。「セーブ・ザ・クイーン!」声が近づいてくる。男が振り返ると、そこにーー「セーブ・ザ・クイーン!」一体の騎士型アンドロイドがいた。「きさま……何者ーー」「セーブ・ザ・クイーン!」男の台詞に変態が被せて言い放つ。「言葉が通じないのか?ならば……」そう、男が杖をかかげて何かの呪文を唱える。「ふふ、これはあの女に使ったのと同じ魔法だ。とくと味わうがーー」「セーブ・ザ・クイーン!」「……貴様、そのゴーグルはなんだ?」「VR」初めて、変態アンドロイドがまともに喋った。「VR? なんだそれは?」黒衣の男が質問すると。「セーブ・ザ・クイーン!」「もう、いい。分かったから黙れ」「セーブ・ザ・クイーン!」「………」「セーブ・ザ・クイーン!」「セーブ・ザ・クイーン!」「セーブ・ザ・クイーン!」変態アンドロイドは連呼した。「あぁ、もう嫌だ。頭が痛くなってきた。お家帰りたい……」黒衣の男は非常に疲れた様子で独りごちて、そのまま踵を返した。「セーブ・ザ・クイーン!」「セーブ・ザ・クイーン!」「セーブ・ザ・クイーン!」静まり返った広場に、一体の変態アンドロイド……いや、騎士の姿がそこにあった。⸻「セーブ・ザ・クイーン!」「ギィヤァー!!」花子は物凄い勢いでベッドから跳ね起きた。彼女の額や首筋は寝汗でぐっしょりとしている。「な……なんで、返品したのに夢にまで出てくるのよ……」「おい……どうした?」花子が隣を見ると、彼女の絶叫に叩き起こされた不憫な夫が、少し呆れたような、心配しているような感じで顔を覗き込んできた。「いや……実はね」そう彼女は、さっき見た夢の内容を夫に説明した。「ふーん、あの不良品の警備アンドロイドがな〜」「うん。もう恐怖でしかなかったよ。夢の中でね、広場で目を覚ました私の顔を覗き込んできて、『セーブ・ザ・クイーン!』とか叫んできたんだもん……」「くっ……ww」夫は笑いを堪えるのに必死だ。「ちょっとさ、何笑ってるの?」花子は結構マジで苛立っていた。「いや、なんか面白くてさwwたかだか一体のアンドロイドのことがそこまでトラウマになるなんてな」「ちょっとさ……あなたはあの時に現場にいなかったから、そんな軽口をーー」ーーーピンポーン♪花子の台詞の途中で、インターホンの音が空気を裂いた。すぐにモニターカメラで訪問者を確認する。「あら? 宅急便屋さんじゃない。あなた、何か注文したの?」「あぁ」夫は短く答えた。「ふーん」花子はテキトーに相槌を打って、通話ボタンを押した。「はーい」「あっ、◯◯運輸です! お荷物のお届けに参りました。あの、荷物がかなり大きいので直接のお渡しになります」「あっ、はーい。わかりました。(大きな荷物?)」花子は少し訝しげになってーー「ねぇ、あなた何を注文したの?」夫に再度、注文品の確認をとった。「あぁ、こないだのセールでさ、ア〇〇ンでかなり安くなってて、試しに買ってみたんだよ」「何を?」花子は、腹の底から込み上げてくる不安を感じながら聞いた。「ん? 騎士型警備アンドロイド」次の瞬間、花子の顔から血の気が引いた。「セーブ・ザ・クイーン!」#ナイト気取り野郎 #VR#songtostory#ことばりうむの星 #音楽と言葉