#グラで短編小説書いてみたい #アナ小説第10話 第10話 ノクスに乗って、ゆっくりとお屋敷を目指す。 目線が高くなると、見慣れたはずの森がまるで別の世界みたいに見えた。 歩いていた時よりも木々は高く、草の色は私の知っている色よりもキラキラと時々金色に見えた。 いやこれは、葉の色じゃなく、空気の中に淡く金色に光る粒が漂っている―― 枝のあいだから飛び出した小鳥は、可愛らしい声で鳴きながら、虹のような羽をひらめかせていく。 ――やっぱり、ここは私の知っている世界じゃない。 お屋敷が近づくにつれて、そのお屋敷の大きさが分かってきて、思わず息をのんだ。 どうしても日本の家を想像してしまっていたようで、広大な敷地と荘厳な建物を目にするとここは近代ヨーロッパ風の世界なのだと改めて思い知らされる。「おっきい…ここ、全部グレイヴさんのおうちなんですか?」「まぁな。でも、これは小さいほうらしいぞ。」「…グレイヴさんって何者??」「ははっ、俺はついこの前まで平民だったんだ。今は陛下に男爵位を賜ったのグレイヴ・ティオン 男爵だ。」「へぇーすごい方なんですね!」 えーと、確か私が日本で読んだ小説だと、男爵って貴族の位では1番下だったはず。「陛下」ってことは王族もいる世界か。 うわっ、思ってたよりもすごい世界じゃない! 私みたいな平民から貴族になんて相当大変そう …あれ?どうしたら平民からお貴族様になれるんだろう?もしかしてグレイヴさんって実はとんでもない人だったりして――「さっ、着いたぞ」「あ、はい。ありがとうございました」 そう言いながら、ノクスから降りた。 かっこよく降りたかったのに、初めての乗馬は思った以上に筋肉を使ったようで、足がもたついた瞬間―― 後ろからグレイヴさんの腕がサッと支えてくれる。「危なっかしいな」「す、すみません!ありがとうございます!」 情けないところを見られてしまって、顔がじんわり熱くなる。 うぅ、もう少し上手くできると思ったのに…。 屋敷から男女の2人が急いで出てきた。 2人とも私やグレイヴさんとあまり変わらない歳に見える。「グレイヴさま。お早いお帰りで」 そう男性の方が言って、目線だけチラリと私を見た。「この方はレイミナ嬢だ。森で倒れていたのを見つけて保護した。 記憶をなくしてるみたいで、名前以外は覚えていないらしい。 無理のないよう、できるだけ丁寧に頼む」「レイミナ嬢、この2人は ブルーノとヨナだ」「執事のブルーノでございます。」「侍女のヨナです。これからレイミナ様のお世話をさせていただくことになるかと思います。よろしくお願いいたします。」 ブルーノさんは、黒みを帯びた青髪に水色の瞳 ヨナさんは、赤みのあるオレンジの髪に淡い緑の瞳 うん、カラフル! この世界で初めて会ったグレイヴさんが日本でよく見た黒髪だったから、何も思わなかったけど―――よく考えたら私だって銀髪なんだよね。「よ、よろしくお願いします。でも お世話なんて…なんでも自分でできますし。色々グレイヴさんが気になることを調べて下さるだけだって言われていましたし…」 “ねっ!”って気持ちを込めて隣りのグレイヴさんを見る。「いや、何も覚えてないんだろ?調べたあと、どこへ行くつもりなんだ?」 とグレイヴさんが顔を寄せて言ってきた。 あ、グレイヴさんの瞳って黒じゃなくて深い紫なんだ。「……確かに、行くあてないです。すみません、少し長居するかも知れません。 改めて、レイミナと申します。これからよろしくお願いします」 そう言って2人にぺこりと頭を下げた。