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Lalala(ララ)

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[ハートポーズ]ショートストーリー:『黒板のシンデレラ —— 午前6時の展覧会』




Scene: 早朝の教室 朝日 黒板一面のチョークアート 黒板消しを持つ少女

噂になっていた。「朝、教室に来ると黒板がうっすら白い」と。 僕はその正体を確かめるため、午前6時に教室のドアを開けた。

息を呑んだ。 黒板一面に描かれていたのは、チョークだけで描かれた「窓」の絵。 そこからは、見たこともないような幻想的な空と海が広がっていた。 描いていたのは、不登校のクラスメイト、ヒカリだった。 彼女は、人が怖くて教室に入れない。だから、誰もいない時間に来て、絵の中でだけ「外」へ飛び出していたのだ。


「……見ないで」 彼女は僕に気づくと、慌てて黒板消しを掴んだ。 「待って! 消さないで、すごく綺麗だ」 「ダメなの。チャイムが鳴ったら、私は消えるの。この絵と同じ」 彼女の手が震えている。

僕はポケットからスマホを取り出し、カメラを起動した。 「じゃあ、せめて残させて。君がここにいた証拠を」 カシャッ。 シャッター音が、早朝の静寂に響いた。 彼女は消すのをやめ、少しだけ泣きそうな顔で、描いたばかりの「窓」を見つめた。

Epilogue: 消せなかったメッセージ

翌朝も、ヒカリは教室にいた。 昨日撮られた写真を消してもらうよう、僕に頼むつもりだったらしい。 けれど、彼女は黒板の前で立ち尽くしていた。

黒板の、彼女が描いた「空と海の絵」の周りに、無数のカラフルな付箋が貼られていたからだ。 『なにこれ、すげー!』『消すのもったいない!』『この海、行ってみたい』 僕が昨日、クラスのグループチャットに写真を一枚だけ投稿した結果だった。 みんな、早起きして見に来たり、放課後にメッセージを残してくれたのだ。

「……私、消さなきゃいけないのに」 彼女の声が震える。 「消せないよ。みんなが『残して』って言ってるんだから」 僕が言うと、彼女は両手で顔を覆い、その場にしゃがみ込んだ。 指の隙間から、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。それは悲しい涙ではなく、初めて世界に「色」を受け入れられた、安堵の涙だった。 その日の黒板は、授業が始まっても、先生の配慮でそのまま残された。

(完)

#黒板アート #不登校 #承認欲求 #ほろ酔い文学
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ショートストーリー:『雨上がりのノック —— 15センチの勇気』


Scene: 雨の降る玄関先 閉ざされたドア 傘をさして立つ主人公

「……ごめんなさい。今日も、行けない」 インターホンの越しに、ユキの消え入りそうな声が聞こえる。 彼女は、完璧でなければならないという優等生の呪縛に囚われ、ある朝突然、靴が履けなくなってしまったのだ。

僕は、傘を握り直して、いつもと同じように明るく答える。 「わかった。じゃあ、また明日来るね」 「……どうして? どうして怒らないの?」 「怒る理由がないよ。君が元気でそこにいてくれるだけで、僕は嬉しいから」

説教も、励ましもしない。ただ毎日、彼女の存在を肯定しに通う。それが僕の約束だ。 雨の日も、風の日も。

そして2週間後。雨上がりの朝。 「……おはよう」 ガチャリ、とチェーンの音。 ドアがわずか15センチだけ開いた。 隙間から覗いた彼女の瞳は、まだ怯えていたけれど、確かに外の光を求めていた。 「今日は、空がきれいだよ」 僕が言うと、彼女は少しだけ、本当に少しだけ笑った気がした。

Epilogue: 鎖(チェーン)が外れる音

「……待って」 僕が背を向けかけた時、背後で金属的な音が響いた。 ジャラッ。 それは、彼女を世界から隔てていたドアチェーンが外れる音だった。

ゆっくりと、重たい鉄のドアが全開になる。 そこには、眩しそうに目を細め、裸足のまま玄関タイルに立ったユキがいた。 15センチの隙間からでは見えなかった全身の姿。 彼女は大きく深呼吸をし、震える足で、一歩だけ外のアスファルトへと踏み出した。

「……雨の匂いがする」 「うん。もうすぐ虹が出るよ」 僕たちは並んで空を見上げた。 まだ遠くには行けないかもしれない。でも、この一歩は、数千キロの旅よりも偉大な一歩だ。 僕の傘はもう、彼女には必要なかった。

(完)

#不登校 #第一歩 #雨上がり #ほろ酔い文学

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