《合作作品》yjk x @あお『灰猫とあお 』俺は猫、毛並みは白と黒のグラデーションだけど、ぱっと見はグレーに見える。だから、“灰猫”でいい。ちなみに、まっぱだ。あたりまえか......野良猫だしな。帰れる家は一応はあるんだが、もうずっと帰っていない。今日は気まぐれでGRAVITY市にある、「ことばりうむ公園」に散歩に来ていた。すると、公園のブランコに青い髪が映える少女が1人、こぎもせずにただジッと地面を睨んでいる。「なんだあれ......?」よく見ると、その少女の足元は濡れていて、目元は赤く腫れていた。もう泣いてはいなかったけど、頬には何かがつたった跡があった。「あぁ......どうしよっかな...」ぶっちゃけ、めんどそーだなと思った。だけど、彼女のことを見ていると、古傷が熱を帯びてくるのを感じた。「どないしたん?」気づけば、俺は彼女に声をかけてしまっていた......彼女が俺に気づいた。少し、驚いているみたいだった。まぁ、そりゃそうか...いきなり見ず知らずの他人に話しかけられたらビビるよな(笑)しかも、野良猫に......---「ね。“和”ってなんだろう」少女はぽつりと呟いた。ブランコの鎖が、きい、と風に鳴る。まるでその声に返事をするかのように。俺は隣のブランコに飛び乗る。地面より少し高いところ。それでも彼女の問いに答えるには、ちょうどいい位置だ。「和……って、“わ”のことか? 仲良しこよし、みたいな?」「ううん。ちがう。なんか……もっと曖昧で、たまに変な空気を生むんだよね。合わせないと、変な人にされるっていうか」少女の声は、まっすぐに刺さるくせに、どこか遠くの空を見ているようだった。「“和”って○いね。ぴったりにならないの。春は、春のままで咲いていいのに。秋には秋の彩りがあるのに。どうして人間は、“合わない”ものをはじこうとするんだろう」風が、彼女の青い髪をそっと揺らす。「“うんと”考えたの......私は、ただ“違う”だけだった。でも、いつの間にか、“間違ってる”ことにされてた。周りに合わせない私が、悪いみたいに。みんな“和”って言えば、正義になると思ってる。ねえ、なんでそんな簡単なことができないのかな──それぞれの良さを、ありのままに慈しむことが」俺は黙って聞いていた。デジャブだな......(笑)俺は″普通″に憧れていた。でも、普通になりきれなくて、気付いたら野良になってた。それに比べて、この子は健気だな......それでもなお、普通と向き合い続けている。「……きみ、ちょっと変わっとうな」そう言うと、少女ははじめて少しだけ笑った。「よく言われる。ていうか、そう言われるのにも、もう疲れた」「ちゃうわ(笑)おかしいって意味やない。″おもろいヤツ″ってことや♪褒めとんやで?」「おもしろいって……」「俺、灰猫。白と黒のまじりもんだけど、ぱっと見グレー。ぴったり分けられないから、いつもどっちつかず。でもな、それが俺や。君も、名前あるん?」「……あお。“青”って書くの。空の色とか、悲しみの色とか、人によって意味が違うけど。私自身は、どれに当てはまるのか、よくわからないんだ」そのとき俺は、ようやく気づいた。あー、この子は昔の俺とも少し違うな。肌で感じてるんじゃない。はじめから、“見えている”んだ。俺の姿だけじゃない。この世界の、嘘や偽り、その奥にある“痛み”まで──全部、見えている。いや......これは、それだけじゃない。「へへ......」「なんで、ニヤついてるの?」「きみ、ええもんもってるやん♪」「......なにが?私、すっごく苦しいんだよ?″見えてる″ことが才能とか言うならやめてね?確かに、私は頭いいよ?でも、これは……呪いみたい、って思うときがある」「痛いよね......だから、今はそう思うんかもな。でもな、それはギフトやで♪」「どゆこと?」「君が“そっか”って思えるときが来るんや。そしたら、きっと世界の見え方がガラッと変わる。俺には、そうなるって確信があるんよ。」「……“そっか”って?」「うん、自分の中でカチッと何かが噛み合う瞬間ってあるやろ?君には、その瞬間がちゃんと来る。それはな、ただの納得やない。人としての一つの“在り方”や。それを見つけたとき、ほんまの“応え”に近づけるんやと思う。」......まさか、こんなところで出会うとはな。いるところには、いるもんだな。「まぁ、のんびり歩いて行きーや♪あんまり焦ると、せっかくのべっぴんさんと、綺麗な青い髪が台無しやで〜ww」「は?なに?口説いてるの?......野良猫のくせに(笑)」「大事にしいや......ほんまに」「......」「会えて嬉しかったわ♪ちなみに、俺ほんまは灰色ちゃうんねん」「え?」「群青色!今は、ちょっとくすんで灰色に見えとうけど、元は君の髪色そっくりな色やねん♪だから、青は俺の一番好きな色!空も海も、悲しみも、苦さも、あの空気の重ささえも──青ってのは、この世界をまるごと抱きしめとる色や。優しくて、強くて、ちょっと寂しくて……でも、だからこそ、一番ええ色や。」「あの......猫さん?」「ほなな、俺、君のことめっちゃ気に入ってもたわ(笑)また、どっかで会おうな」それだけ言って、俺はブランコから飛び降り、公園を後にした。---猫さんの背中は、すぐに遠くなった。あんなに自由で、あんなに気まぐれで、だけど──誰よりも、わたしの内側にまっすぐ届いてきた。「……灰猫、か」そう呼んでいたけど、わたしの目に映っていたのはちがう色だった。透き通るような、壊れそうな、でも消えずに輝く、薄いブルー。どこか似ていた。わたしの中の、誰にも見せたことのない感情の色に。はじかれなかった。異質じゃないって言われたわけじゃないけど、それでも、わたしは、わたしのままでいられた。そんな瞬間、いままでなかった。“わかってくれた”なんて、軽く言いたくないけど、あの猫は、何も言わずに──わたしの“違い”に、居場所をくれた。胸が、少し痛くなった。なにこれ……こんな気持ち、知らない。あたたかいのに、さみしくて、やさしいのに、どこか、こわい。言葉にしようとすると、全部壊れてしまいそうで。……これが、“恋”?ううん、ちがう。たぶん、まだちがう。でも──心に、はじめて何かが芽生えた気がする。名前もつけられないその気持ちを、わたしは、そっと、胸に抱きしめた。#青の記憶#そっかの瞬間#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント~0~0~0~0~0~0~0~0~〈編集後記〉みなさん、読んでいただいてありがとうございました。最初はあおさんからお誘いを頂いたのですが、「僕の世界観に合わせてみたい」というご要望をいただいたので、好き勝手に作らせていたたきました(笑)結果として、僕とあおさんの感性が交差して、ちょうどいい温度と湿度で結晶化した良い作品になったと思っています。そして、これは、“違う”ことを慈しむための物語。そして、“言葉にならないもの”に、あえて言葉を与える試みにもなりました。では、あおさん感想をどうぞ〜(あおさん) ~灰猫の背中を見つめながら~この作品は、何度もラブコールを送り続けて、やっと(?)応えてもらえた、待望の合作です。灰猫が少女(青)にかけた言葉が、不思議と、私にも届いて──気づけば泣きながら書いていました。「そのまま、ここにいていいよ。」まるで、そう言ってもらえたような気がして。人のやさしさに、こんなふうに救われるんだなって、久しぶりに思い出しました。少女・青に、“かちっ”とくる瞬間が、いつか訪れますように。私にも、そんな瞬間がちゃんと来るのかな……なんて。群青色の猫さんが、灰色になったのは何でだろ?ダイジョブかい?って、つい聞きたくなって。あおの“一肌脱ぎたがり”の血が騒ぎましたが──自称イケメンの yjk さんは、するするとかわして、なかなか掴ませてくれず……脱がせてもらえませんでした(笑)それでも、この作品に登場する青も、そしてたぶん私・あおも、“はじかれなかった”という事実が、何よりの救いだったように思います。読んでくれたあなたの心にも、なにかやさしいものが、ふっと残っていたらうれしいです。