ことばは、スライムだと思う。ぺたぺたと貼りつき、するりと逃げ、思いがけず相手にダメージを与える。この形、はたして言葉の“本質”なのか?それとも、わたしの手の温度で変質した“気まぐれ”か?スライムの正体は、水と粘りと透明ななにか。言葉もまた、音と意味と曖昧ななにか、でできている。だれかに投げれば、ぶよんとくっついて、変なふうに誤解されたり、冷たく拭われたりする。ときには、意図せず、急所にヒットする。だから、黙っていた方がましだと、「沈黙は金」なんて金言が生まれるのだろう。わたしにとっては、スライムの手触りのほうが大切だ。ことばをこね、伸ばし、ちぎってみた人なら知っている。このぷよぷよは、やがて形になる。やさしさにもなり、剣にもなり、ときに、進化する――きらりと光る瞬間があるのだ。わたしは、ことばというスライムで世界をつくっている。関係性も、記憶も、愛も痛みも、みんな、言葉という名のスライムでつくられた、ぷるんとした構造体の上に浮かんでいる。しっかり握れば崩れるし、手放せば伝わらない。だからわたしは、きょうもぺたぺた、この小さなスライムをすくいあげて、あなたに渡してみる。うまく、届くかは、わからないけど。ときどき、特別なスライムが生まれることがある。たとえば、ふと心に残った誰かのひとこと。それは、わたしの中でぷるぷる震えながら、いつしか“グロッシウムスライム”のような輝きをまといはじめる。言葉は、進化する。ぶよぶよのまま、王冠をかぶることだってある。きょうもまた、手のひらにのった小さなスライムが、誰かの心で、進化するかもしれない。#スライム王国 #ことばはスライム#手のひらモンスター