去年付き添いで行ったピアノコンクールの話。長文&ただの記録。去年頼まれて、とあるお子さまのピアノコンクールに付き添った。その子は全く喋らない小学5年生の男の子(Tくん)で、私はその保護者さま(Aさん)と長い付き合いである。ことの始まりは、Aさんからの相談だった。「Tが、中学生になるタイミングでピアノを辞めるから、コンクールで賞を取っておくって言ったんです」Tくんは、コンクールに出たことがない男の子だった。ピアノは喋らないTくんの将来を心配してAさんが習わせていたもので、ただ近所にあるという理由で選んだピアノ教室だった。Tくんは、ほとんど喋らない。それは幼少期から一貫している。喋れないわけじゃなくて、どういうわけか必要最低限しか喋らない。「ほんとならどこか受診すべきなのだろうと思ったけど、頭は抜群に良いし、周りもそれなら良いって言うし何より…」ボランティアで子育て支援活動をしていた私と、初めて会った時に、Aさんは言った。「本人が、全く困っていないようなんです。正直Tが、何を考えているのか、わからない」それからずっと、気にかけて見守っている親子だ。コンクール予選は驚きの連続だった。(やっぱり、みんな上手…当たり前か)私は横で座るTくんを見る。Aさんに頼まれて、Tくんの足台係として付き添う私。Tくんはまだ背が低く、ピアノを弾く時に足台を使う。こだわりがあるそうで、自前のものを持ち込む。ステージに出るときに私も一緒に出て、足台を置いて去る。それが仕事だった。それにしても、今時のお子さまは凄い。ノーミスで弾くのは当たり前。堂々としている。タッチが正確で、表情が豊か。(緊張してきた…)冷や汗が出てきた私とは対照的に、Tくんは涼しい顔である。光の加減で、Tくんの瞳には赤が混じる。色素が薄い。Tくんの番号が呼ばれる。顔色1つ変えずスタスタと、いつも通り歩くTくん。緊張しすぎて足台を置くときにガチャンッと大きな音を出してしまった私。Tくんが、一瞬スッと目を細める。(ごめんなさい…)心のなかで謝りながら、去る。予選は、難なく突破した。「凄い!」とスマホで結果発表を見て興奮する私。その隣には、全く喋らないTくん。じっとこちらを見つめる瞳に『当たり前でしょ?』と、言われた気がした。#ピアノコンクール前編#あの時の記録#長文