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ゆうじい

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「俺ら、帰るわ」

仲間の一人が、あっさりと言った。
もう一人も無言で頷く。
その目は、はっきりと“行くな”と言っていた。

「悪いな」

それだけ残して、二人は上着を手に店を出ていく。
ドアが閉まる音が、やけに軽かった。

私は一瞬だけ迷った。
正直に言えば、酔っぱらいの男と行くのは気が進まない。
面倒な予感しかしない。

それでも――

麻上が、静かにこちらを見ていた。

煽るでもなく、止めるでもない。
ただ、観察するような目。
何かを“確かめようとしている”人間の目だ。

その視線に、妙に興味が湧いた。

この人は、怖いから知りたいんじゃない。
知りたいから、怖さを脇に置けるタイプだ。

「……俺は、行く」

そう言うと、マスターが一瞬だけこちらを見る。
何か言いかけて、やめた顔。

「気ぃつけて」

短い一言だった。

酔っぱらいの男は、もう入口の前で靴を履いている。

「ほら、早くしろよ」

その背中が、少し大きく見えた。

麻上はコートを羽織りながら、私に並ぶ。

「無理そうだったら、すぐ引き返しましょう」

その言い方が、仕事でも礼儀でもない、
ちゃんとした“人”の距離感で、逆に安心した。

外に出ると、夜気が一気に肌を刺す。
三月半ばとは思えない冷え方だ。

路地は、店から本当にすぐだった。
二、三分も歩かない。

あの角を曲がった先。

私のスニーカーのかかとが、
無意識に、地面を確かめるように一歩踏み出す。

――今度は、
掴まれるのか。
それとも、何も起きないのか。

あるいは。

私たちは、静かに細い路地へ足を踏み入れた。

つづく。
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