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関税自主権（かんぜいじしゅけん）とは、国家が輸入品にかける税率（関税率）を、他国の同意なしに自由に決める権利のことで、国家主権の根幹をなすものです。日本では幕末の不平等条約（日米修好通商条約など）によりこの権利を失い、国内産業に大打撃を与えましたが、明治時代後期に外務大臣の小村寿太郎が各国との条約改正交渉を粘り強く行い、1911年の日米通商航海条約（小村条約）で「関税自主権」の完全回復を達成しました。現代ではWTO協定下で協定税率が適用されますが、これは互恵的な国際協力に基づくもので、歴史的な意味での「関税自主権の喪失」とは異なります。
関税自主権の歴史と回復
喪失（幕末）: 1858年の日米修好通商条約などにより、日本は輸入品に自由に税率をかけられなくなり、安価な外国製品の流入で国内産業が衰退しました。
回復への道のり: 明治政府は条約改正を最重要課題とし、岩倉使節団の派遣や、外務大臣の寺島宗則、井上馨、大隈重信らが交渉を重ねましたが、困難を極めました。
完全回復（1911年）: 最終的に、小村寿太郎外務大臣がアメリカとの交渉を成功させ、1911年に「小村条約」を締結して関税自主権を完全に回復しました。これは、治外法権の撤廃とセットで実現された、日本の近代化の象徴です。
現代の関税自主権
WTO協定と協定税率: 現在の日本は、世界貿易機関（WTO）協定に基づき、協定税率（相手国との交渉で決める互恵的な税率）を適用しています。これは、不平等条約下での片務的な制限とは性質が異なります。
「関税自主権がない」という表現: 現代で「関税自主権がない」と言う場合、多くは協定税率を指し、他国との交渉なしに一方的に税率を変えられない状態を指しますが、これは歴史的な意味での主権喪失とは区別されます。
関税自主権の重要性
国内産業の保護: 自国の産業（農業や工業など）を保護・育成するために、輸入品に高い税をかけ、国内製品の競争力を保つ上で不可欠な権利です。
経済政策の根幹: 国際情勢や安全保障の観点からも、関税は重要な政策手段であり、現代でもその活用が注目されています。