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味しらべ美味しすぎ
父ちゃんは、厳しい男だった。
厳しいのに、不器用なほど優しかった。
子どもの俺は、
その優しさが照れ隠しだなんて気付かず、
ただ一つの言葉だけを真に受けた。
「男が泣いていいのは二回だけだ。
一回目は産まれたとき。
二回目は母ちゃんが死んだときだ。」
父ちゃんは酔うたびに言った。
落ち込んでる時にも言った。
何もない日にも言った。
言葉は、呪いみたいに俺に染み込んだ。
俺は泣かないと決めた。
心をくいしばり、滲んでも溢れても、泣かなかった。
子供は、ギリギリと音を立てながら育った。
覚悟はしていたあの日。病室で看取ることが出来た。
大きなあくびをひとつ。
最後は吸い込んだまま。
母ちゃんが死んだ日、
許された“二回目”が来た。
泣けなかった。
涙腺の奥に“父ちゃんの顔”が貼り付いて、
あの声が喉を潰していた。
「男が泣いていいのは……」
違う。
俺は泣きたかった。
泣きたかったのに。
くいしばり過ぎた。
その夜、俺はひとりで決めた。
「泣くのは、嫁のためだけにする」
父ちゃんの遺言を乗り越える涙は、
母ちゃんでもなく、
俺自身でもなく、
この人のために使う。
その瞬間のために、
2度目を持ち越したんだ。
そう考えた。
美談でも宗教でもなく、
俺が勝手に始めた個人的な儀式。
悔しくても泣かない。
挫けても泣かない。
母ちゃんの夢を見ても泣かない。
嫁が寝てる顔を見ても泣かない。
全部、“その時”まで取っておいた。
ある日、
医者が静かに告げた。
「あなたのほうが、奥さんより先に……」
世界が傾いた。
胸が空洞みたいになった。
泣こうとした。
涙を絞り出そうとした。
でも——
涙腺は固まったまま。
節約しすぎて、
守りすぎて、
使い方を失った涙。
嫁は俺の震えた手を握って、
笑いながら泣いた。
「あなたが先なんて……ズルいでしょ。」
俺は冗談みたいに言った。
「いや、大丈夫。
俺の涙……まだ取ってある。」
でも実際は、指一本動かすより難しかった。
死が近づく頃、
父ちゃんの顔がふと浮かんだ。
遺言の声が遠くで響く。
母ちゃんの、大らかな背中。
父ちゃんの、不器用な背中。
全部が一度に蘇る。
その瞬間。
深い、深いあくびが出た。
息を吸い込んだだけで胸が裂けそうになる。
喉が痙攣し、
目尻の奥が突然熱を持った。
あ。
来る。
来るな。
来るな。
それは違う。
ここで使うのは違うだろ。
俺が人生かけて守ってきた涙だぞ。
張りつめて、くいしばって。固く硬く頑なに噛んで。
父ちゃんを越えて、
嫁のためだけに残した涙。
なんで今なんだよ。
なんで“あくび”なんだよ。
涙は、勝手に流れた。
流れ始めたら止まらなかった。
使う瞬間を選びたかったのに。
誰にも渡したくなかったのに。
嫁じゃなく、
母ちゃんでもなく、
父ちゃんですらなく。
あくびに奪われた。
最も価値のない理由で零れた。
悔しくて、
情けなくて、
だけどもう止まらない。
嫁は泣きながら笑った。
「あなたらしいよ。ほんと。」
俺は悔しさと諦めと、
どうしようもない滑稽さの中で、
涙を流しながら大きく息を吸った。
最後まで、
泣く相手を選べなかった男のまま。
けれど、
その涙を見て笑う女が隣にいた。
それで——
まあ、いいか。
と、少しだけ思えた。
息はもう
吐けない。
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Jo

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みれ
音楽好きのこうちゃんは、私に色んな曲を教えてくれた。
こうちゃんは気さくで明るくて、男女共に友達が多い。
当時の私とは正反対のタイプやった。
なのに何故か私を好きになってくれて
付き合うことになったけど
気持ちに応えれきれなくて、ほどなくして別れた。
それから時が経って、高校卒業した後に再会。
相変わらず、私に色んな曲を教えてくれた。
「最後に、一回だけ抱きしめてもいい?」
どういう流れでこうちゃんがこれを言ってきたのか、覚えてないけど
夕方の公園で、緊張した声と、少しぎこちない腕の動きだけ覚えてる。
それからこうちゃんと会うことはなくなった。
こうちゃんが最後に教えてくれた
Utadaの「Kremlin Dusk」
ふいに思い出して、聴いてる。

麦チョコちゃら
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佐藤さ

ホット7
うしろソリ♡(第二)
#ラジオ体操

咲夜
覚えてくれた曲あれだったか。助かる

けろじ
雨の日も風の日も
で、今日も一日さあ、スタート!!

rimutaro
適応障害になったのも、外に目が向いて浮気まがいな事をしたのも、全て私のせいだと。
その時は心底自分を責めて消えたくなった。
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優しさに甘えて4ヶ月たった今、母が緊急入院した。
癌。ステージ4。
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それを聞いた瞬間あの時の記憶が鮮明によみがえって、、、
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私が実家に転がり込んだせいだ。
悪い方にしか思考がはたらかない。
母に万が一のことがあったら、、、
紅🌺(Beni)
お目覚めいかがでしょうか?
今日も無事に終わる事を願います[キラッ]


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吹田に行きたかったなぁ
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