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わたしたわし

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深い湖の底に、ルナという名前の化物が住んでいました。
ルナは長い触手のような腕と、淡く光る青い体、大きなひとみの目を持った、ちょっと不思議で怖い姿の化物。湖の魚たちでさえ、ルナの姿を見るとすぐに隠れてしまうほどでした。
ルナはいつも湖底の岩に座って、静かに水の流れを感じていました。
誰とも話さず、ただ湖の上を泳ぐ影や、時々落ちてくる木の葉を眺めているだけ。心の中では、誰かと一緒にいたいと思っていました。
ある嵐の夜のこと。
小さなカワセミのコハルが、強い風に飛ばされて湖に落ちてしまいました。羽が濡れて飛べなくなり、必死にもがいているうちに、どんどん湖の深いところへ沈んでいきました。
ルナはそれを見て、そっと近づきました。
「……大丈夫?」
コハルはルナの姿を見て、恐怖で固まってしまいました。
「ひっ……化物……!」
ルナは傷ついた顔をしましたが、触手を伸ばしてコハルを優しく包み、湖底の自分の住処へ運びました。そこは柔らかい水草が敷き詰められた、静かな場所でした。
ルナは自分の体から淡い光を放って、周りを明るくしました。コハルは震えながらも、その光が温かくて優しいことに気づきました。
「怖がらせてごめんね。私はルナ。この湖にずっと住んでるの。あなたを助けたかっただけ」
コハルは少しずつ落ち着いて、羽を乾かしながら話しました。
「ありがとう……私はコハル。嵐で飛ばされちゃって……」
二人は夜通しお話しました。
コハルは空の上や森のことを、ルナは湖の底の秘密や、光る魚たちのことを教えました。ルナはコハルに、湖底に咲く珍しい水の花を見せてあげました。
朝になると、コハルの羽が乾いて、飛べるようになりました。
「もう帰れるよ……ありがとう、ルナ」
ルナは寂しそうに目を伏せました。
「うん……気をつけて帰ってね」
コハルは湖面に向かって泳ぎ始めましたが、すぐに戻ってきました。
「……やっぱり、ちょっと怖い。空に帰るの、久しぶりで」
ルナの顔が静かに明るくなりました。
「だったら、私が湖面まで送ってあげる」
それからというもの、コハルは毎日湖にやってくるようになりました。
湖面に浮かんでルナと話したり、ルナが湖底から持ってきた美しい石や貝殻をもらったり。時にはコハルがルナを背中に乗せて、少しだけ水面の上を飛んでみたり。
湖の魚たちも、最初は驚いていましたが、コハルとルナが楽しそうにしているのを見て、だんだん近くによってくるようになりました。
ルナはもう孤独ではありませんでした。
「化物でも、友達はできるんだ」
コハルが空から笑顔で降りてくると、ルナは静かに、でも確かに微笑みました。
湖の底で、二人の友情は穏やかに続いていきます。
深い青の中で、光る化物と小さなカワセミの、静かな友達物語。

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