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ひつじ🐑
じっと眺めていると
たしかに動いて、流れて、重なって
ちぎれて、つながって、大きさを変えている
そこには色んな速度が存在していて
それが層の重なりであることを思い出すの
別々の高度に浮かぶ かたまり同士
いいえ、ほんとうは
かたまりですら、ないはずのもの
水分量も 乗る風の向きも 違っている
なのに、地上から見ると
ひとつ ふたつと数えられるもので
全部いっしょくたに 雲 だと括られる
ときどき、猫だったりくじらだったり
ソフトクリームだったり
どこかの誰かが名前をつける
触りたい、包まれたい、おいしそう
ああなりたい と
期待や願いを押し付けられる
とある瞬間、雲は
ぺらりとめくれる背景の一部になる
ときに動きもせず
ときに存在すらしないものに変わる
距離も実態も意思も無視して、
空に貼り付けられている
雲は
常に現れたり消えたりしているはずなのに
私は、その瞬間を見た記憶が無いと気づいた
いつの間にか生まれて
いつの間にか流れてきて
いつの間にかそこにあって
いつの間にか消えている
誰かの人生みたいに
スーツケースを転がしながら
今にも消えそうな雲を見つけて、
つい追いかけたくなった
さしかかった高架下を慌てて通り過ぎ
その雲と再び目が合った時には
もう、ほとんど形がなくなっていて
あっという間に空色に溶けた
ほらね、こうやって消えるんだよって
雲が自慢げに見せてくれたように感じた
そこには最初から、
なんにもなかったみたいだった
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