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『三月某日』

何故その女の子を気にかけるのか、ふと考えてみた。若い頃のカオリを思い出すからかも知れないと思うも、カオリはロシア系だった上に東欧の血が濃く出ていたし、もっとキツい印象で性格も輪をかけてキツかったから、全く似ていないとも思う。ただ、彼女を眺めている気持ちは、カオリを眺めていた気持ちに似ていて、其れは敢えて介入をせずハラハラして勝手に心配をしていたあの頃と同じかも知れない。ただ違うのは、一点だけあって、それはこの文章にあまり関係がない。

annが「だれ?その子。綺麗ね。」と無関心を装って聞いたから、「会った事もないよ。でも、、」その後の言葉も、annにしか教えない。それを聞くとannは、僕の頭を胸に抱いて、ポルトガル語で何か言った。元ない脂肪を通したその言葉の意味も、きっと必要ではない。骨が軋むほど息も出来ぬほど、そんな救いのないバラバラな残骸。

「初めに言葉ありき。」

もしかしたら僕の心は歪んでしまったのではないか。最近の僕を支配するその妄想は、お決まりの無我夢中。その度に相手の女の子は違うが、決まって重たい空気の中、二人の関係が途切れた事を思い知る場面で、こんな思いをこの先何度も味わうのかと思うと、今すぐに死んでしまおうと焦燥に駆られ早くこの場から逃げなければいけないとそればかりを考え、目が覚める。そして、現実に安心出来るかと思えば、また違うパラレルな世界に飛ばされたように、大した違いがないことに唖然とする。

女神達を次々奪い、ミューズを代わる代わる送る貴方の意思が分からない。人間の及び知るものではないのは分かる。しかし、もしこれで僕が課せられている任務を遂行できなかったとしたら、貴方はどうするおつもりか。
命を奪うだけでは、到底済むまい。

「あんたみたいにカッコよくなりたい。」

御門違いか錯覚だと、カオリに間違えだと訂正する気も起きなかった。彼女は母になって、それから死んだ。彼女を不幸だとは今でも思っていない。

「これなんのさかな?」

「んーシーバス?いやイエローテイルかな。」

「おいしい?」

「どれも美味しい。取ってごらん。」
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