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無学は男の恥
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雫ü

独白

daisuke107
Ⅰ
その部屋には、
いつも薄い光が射していた。
午後の終わりのような光であり、
夢の名残のようでもあった。
彼は、
その光の中で、
何かを見つめていた。
声を持たぬまなざしが、
沈黙のかたちをなぞるように、
そこに在りつづけていた。
Ⅱ
壁には、
古びた紙片がいくつも貼られていた。
それらは、
風化した記憶の皮膜のように見えた。
夜になると、
一枚ずつ剥がれ落ちて、
音もなく
床に降り積もっていった。
まるで、彼の時間が
静かに崩れてゆく音だった。
Ⅲ
「そんなものに、なぜ……」
誰かが、あるいは風が、
そうつぶやいた。
けれど、彼は答えなかった。
ただ、
口元に
ひとつの歪みが浮かんだ。
それは笑みではなく、
否定の届かぬ場所に
漂う
嘲りの残響だった。
Ⅳ
彼は、
古びた紙片に囚われていた。
だが、
そこに温もりはなかった。
その執着は、
夜の底にかすかに浮かぶ漁火ではなく、
沈まぬための錨だった。
Ⅴ
わたしは、
いつもあの部屋を
遠くから見ていた。
灯りが揺れるたび、
彼の輪郭が
この世界から
少しずつ剥がれていくのを、
黙って見つめていた。
それが、
彼の選んだ
孤独だった。
わたしは、
ただそれを
見送るしかなかった。
#自由詩 #自己同一性

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