『マルキ・ド・サド』｜PEGの投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

『マルキ・ド・サド』

ボイトレに来ていた少女と待ち時間に雑談していて彼女は、マルキドサドがフェイバリットだと言った。きっとソドムしか読んでないのだろうし「アリーヌとヴァルクールあるいは哲学小説」が最高なのに、とは言わず「へぇ」とだけまるで関心がない上の空で答えた（事実、あまり関心が無かった）。音楽の話もしないで、彼女の着ている服の事だけ話題にすると、僕はもう退屈になって、「少し眠るから。」とだけ言ってソファに横になり彼女を追い払う。この仕事で、何が苦痛かと言えば長い待機時間だ。大抵スマホを弄るか、散歩に出掛けるのだけれど、最近は寒くて出る気にもならない。何もない時間は、僕の憂鬱を擽るので嫌いだ。ピルケースからデパスとアプラゾラム、それからランドセン（この癲癇用の薬が何故僕に処方されるのか良く分からない。副作用の筋弛緩を狙ってなのか）を適当に見繕い飲み下す。薬効などもう何も感じない、ただの儀式。だが、儀式と祈祷は大事だ。遠いアフリカから流れて来た僕の血にとって、大きな意味を持つ。FDA認可のブードゥー。ファイザー社の陰謀による戦意喪失陥穽計画の一つ。騙されたふりをするのは、悪くはない気分だ。

新居の鍵を受け取り細かい寸法を測りに行く。こんなに寒いのに、ホームから見た遠くの踏み切りは陽炎が揺れて見え、どうも陳腐でいけない。ゆらゆら揺れて、あの車は何処へ行くのか。あの自転車は、あの人は。どうでも良い事柄に、僕が一番当てはまる様な気がして、少しだけ不安になる。こんなに下らない「生活」を維持する為に誰かから「付加価値」と云う詐欺で搾取し、「自由競争」の名の下誰かから奪う。青臭い感傷は、実に居心地がいいけれど、本当は全く興味がない。冷蔵庫の幅なんて気にする事自体が腹立たしく忌まわしい。

楽しい話しをしようか。
そんなもん、何一つないよ。

マルキ・ド・サド··· 確か···ガチサイコパスな気が···[焦る] おっと···関係ないコメ失礼しました···[焦る]

『マルキ・ド・サド』