『こ〜ちゃんのやさしいミニ串カツ』｜こ〜ちゃん🌱の投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

『こ〜ちゃんのやさしいミニ串カツ』

夕暮れの台所。
油が小気味よくはねる音が、今日もこ〜ちゃんの心を弾ませていた。
フライパンの中では、サクサクの衣をまとったミニ串カツが、きつね色に染まりながらじっくり揚がっている。

「前に作ったあの串カツ、みんな嬉しそうに食べてくれたなぁ…」
こ〜ちゃんは揚げ物を見つめながら、ふと優しい表情になった。

小さく切ったとんかつ用の豚肉と、タマネギを交互に爪楊枝に刺して、パン粉をまとわせたミニ串カツ。
香ばしく揚がったあの串カツは、外はカリッと、中はジューシー。
特にタマネギが甘くとろけて、家族みんなの「おいしい！」の笑顔がこ〜ちゃんの宝物だった。

でも、あの日のことは今でも忘れない。

2歳の孫が、まだくわえたままの串カツを手に持ち、椅子からすっと立ち上がった。
歩きながら食べようとするその姿に、ママの声が少し強くなった。

「ダメよ！歩きながら串は危ないから！」
こ〜ちゃんはハッとした。
たしかに、もし転んだら…爪楊枝が口の中で刺さったら…。

「そうか、“おいしい”だけじゃだめなんだな」
その夜、こ〜ちゃんは心にそっと刻んだ。

そして今日。
こ〜ちゃんは新しい工夫をこらして、ミニ串カツをちょっとだけ変えてみることにした。

豚肉は一口サイズにして単品で揚げ、タマネギもくし形に切って、ばらけないように揚げるときだけ爪楊枝で留める。
揚げ終わったら、まだ熱いうちに一本一本丁寧に爪楊枝を抜いていく。

「これで安心やな」
お皿にそっと盛りつけて、隣に千切りキャベツを添えたら──
今日もこ〜ちゃんの“やさしさ定食”ができあがり。

食卓につくと、孫が嬉しそうに声を上げた。
「こ〜ちゃん、カツ！おいしいー！」
「タマネギあまーい！」とママの声も弾む。

串がないだけで、こんなにも安心して、ゆっくりと家族が笑って食べられる。
それが、こ〜ちゃんにとってなによりのごちそうだった。

誰かを思って、少しだけ手間をかける。
それが、こ〜ちゃんのやさしい料理の秘密。