[疑っている]｜🎹碧（aoi）🎼の投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

見えない拍手

路地の片隅、雑踏が行き交う街角で、青年・タケルはギターを手に歌っていた。
古びたキャップには数枚のコインが転がるだけ。
誰も立ち止まらない。
それでも彼は歌い続けた。
自分の音が、誰かに届くと信じて。

ある夕暮れ、いつものようにタケルが弾き始めると、ふと小さな拍手が聞こえた。
見上げると、白い杖を持った老女が立っていた。
彼女の目は光を失っていたが、笑顔は柔らかく温かかった。

「素敵な音楽ね。心に光が灯るみたい」と彼女は言った。
タケルは照れながら「ありがとう」と呟いた。
彼女は名乗らなかったが、毎夕やって来て、曲が終わるたびに小さく手を叩いた。
その拍手は、タケルにとって宝物になった。

ある日、彼女が来なくなった。
数日待っても、杖の音も拍手も聞こえない。
タケルは胸の奥でざわめく不安を抑えきれず、いつもの場所でギターを握りしめた。

数週間後、若い女性がタケルを訪ねてきた。
彼女は老女の孫だと名乗り、静かに言った。
「おばあちゃん、亡くなったんです。でも、最期まであなたの音楽の話をしていました。『あの子の歌は、私の心を照らしてくれた』って」。
女性は小さな手紙を差し出した。
そこには震える字で「ありがとう、タケル君。歌い続けて」と書かれていた。

タケルは涙をこらえきれなかった。
誰も立ち止まらない街角で、彼女だけが彼の音を聴いてくれていた。
その夜、彼は新しい曲を弾いた。
彼女の笑顔を思い出しながら、力強く、優しく。

次の日、いつもの路地に小さな変化が生まれた。
通りすがりの少年が足を止め、タケルの歌に耳を傾けた。
そして、曲が終わると、はにかみながら小さく手を叩いた。

※※あなたがこの物語を最後まで読んでくれたことに感謝します。

そして、あなたも素敵な言葉を沢山の人たちに語りかけて欲しい。

あなたが私の物語を読んでくれたように、誰かもあなたの言葉は必ず心に響いていますよ。