投稿

アッチャー
【届いた柿の味】(全5話)
⑤ 柿の味後(前)
40年前にあった角の材木店は、今もそこにあった。当時木造だった外壁がコンクリートに変わっていたが、木製の大きな看板は昔と同じだった。この材木店がある十字路を右に曲がれば…
当然のことだが、哲生のアパートも、淳也がいたシャタクもなかった。あの頃小さな群れのように立ち並んでいたアパートが全てなくなって、戸建てばかりの整然とした住宅地に変わっていることは一目で見通すことができた。車がやっとすれ違うことができる小幅な道路だけは、あの頃の雰囲気を残している。
出張先の用務を終えて、余った手土産の袋を手に下げ、哲生はゆっくりとその道を歩いた。
哲生は思い出のある一軒の家を探した。当時のこの通りの中で、幸代の家だけが、庭のある一戸建て住宅だったのだ。
「小杉」という表札が目に留まった。その門の前で立ち止まって庭を覗くと、白髪の老女がいた。老女は視線に気づき哲生を見た。哲生は一瞬慌てたが、
「小杉のおばさんですか?」
と声をかけた。
「…小杉ですが…どちら様でしたでしょうか?」
「普天間です。えーっと、幸代さんと、幼稚園と小学生の時によく遊んだ…そこの、あかつき荘の」
「あぁ、あの沖縄の…哲生くん?」
「はい。哲生です。近くまで仕事できたものですから、懐かしくてこの通りを歩いていたら、表札があったので…」
「うわぁー、こんな立派になって、まあ。お元気そうで。びっくりしたわ」
幸代の母は驚きの表情のまま門扉を開いて、哲生を庭に招いた。平屋の建物は現代的になっていたが、子どもが遊ぶのにちょうどいい広さの小庭には懐かしさを覚えた。
幸代の母の後ろに隠れていた小さな女の子が、二人の会話を聞いて、家の中に駆け込んで行った。ほどなくして、その子に手を引かれて女性が出てきた。幸代だった。地味なカーディガンをはおり、化粧はしていない。肌は若々しくきれいに見えたが、長く陽を避けていたかのような青白い顔をしていた。
幸代もその来訪者が哲生であると気づいたようだった。一瞬目を大きく見開き、それから視線を落とした。
(こんな小さい子がいるのか…それとも孫?)
哲生は気になったが、そのことは気に留めないふりをして幸代に話しかけた。
⑤(後)へつづく
©️2024九竜なな也

話題の投稿をみつける

鉱山夫@
ウマジョとか訳分からんのどうでもいいから傘禁止にしてくれよ

ねこし

倉那

白ゴ

パ

🌸はな

アナ
ありのままで 飛び出してみるの
ありのままで 飛び出してみるの

るき🚬

禁煙太
#禁煙
#ホワイトニング

迷🐏雑
もっとみる 
関連検索ワード
