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金木犀
私は、自宅に呼ばれるのが苦手だ。
何故ならば、“当たりorハズレ”の差が凄まじいからである。
まず、はじめに。
我々の仕事は、電話やネットでの予約が主である為“お客様の都合の良い場所”に我々が赴くというスタイルが基本なのである。
だから、“その場所”に到着するまで
“そこ”が、どんな場所なのか分からないし
お客様が、どんな人なのかも分からない。
ある意味、“ロシアンルーレット”的なハラハラ感と、常に共存している…
その日も、店の電話が鳴り予約が入り
御指名を頂き、移動車に乗った。
私はドライバーさんと、いつもの様に和気藹々と指定された場所へ向かっていた。
『ところで、どこに行くの?』
「今から行くのは、自宅っすねー」
『うわぁ、マジかぁ。汚かったら、どうしよぉ〜』
「でもなんか、住所調べたら結構キレイめな13階建てマンションの最上階みたいですよ?」
『お!まじか!それは安心感あるわぁ』
…そう。“キレイめマンション最上階”は、
安心感があるのである。
(当たりだなぁ〜)と思っていたら、マンションに到着。
外壁は、とても綺麗なダークブラウンだった。
(これは、より一層期待できる!)
…そう。“キレイめマンションの外壁がダークブラウンの最上階”は
より一層の期待が出来るのだ。
そして私は意気揚々と車を降り、
エントランスで部屋番号を押し、
とてもハツラツとした挨拶をして、
中へ入る自動ドアを解除してもらい、
いざ!安心と期待のオシャレマンション最上階のお部屋へ!
ドアの前に立ち、お部屋のインターホンを鳴らす。
ガチャ・・・
ゆっくりとドアが開く…緊張の一瞬だ…
目の前に現れたのは…
圧倒的、アガサ博士!!!!!(©名探偵コ〇ン)
あぁ。そうだ。私は、いつもの倍、期待してしまっていた…
ダークブラウンの外壁…
13階建ての高級感溢れるマンション…
その頂きに住まうお客様…それが、
アガサ博士だった!!!(with鼻毛)
人間とは実に、愚かだ。勝手に期待値を上げて
勝手にガッカリしている。
そして、もう1つ。
ダークブラウンのキレイめマンションの最上階の部屋の中は、綺麗であると…
勝手に期待していた。
ドアの向こうは、足の踏み場も無い腐海だった。
私は、ドアを閉め帰った。
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