11年ぶりに妻から誘われた突然の同居生活

共感で繋がるSNS

投稿

穂邉　一綾

2022/09/24

「今日は一緒に寝よう。寝室も準備したの」
11年間一緒に同禽などしていなかった私たち夫婦だったが
会社から帰宅するなり急に妻が言い出した。
おもえば、彼女が鬱病になってから一度も一緒に寝たことなどはなかった。
訝しみながらも入浴後、に寝室に入る。
…そこには想像していなかったものがあった。
ダブルベットの上、真ん中を隔てるように
レースのカーテンが引いてあった。
壁側には妻が既に横になっておりスマホを
眺めている。
「電気、消すよ」そう言って電気を消す。
常夜灯の淡い明りと、妻の眺めているスマホの強いバックライトだけになる。
とりあえず、真ん中のレースのカーテンの
意味を察して、カーテン越しの反対側の布団
に入る。
あいかわらず、妻はスマホを眺めているようで、強い光が閉じた瞼の上から刺すように
刺激してくる。
数分経っただろうか、いつまでも収まらない
ので、薄目を開けて様子を伺う。
妻はスマホを眺めているようだと思った瞬間、それは間違いだということに気が付いた。
彼女の明るく照らされた青白い顔は、明らかに私の顔を凝視している。
瞬間、私の心は冷たい何かに掴まれたように冷たい何かに襲われた。
思えば、妻の鬱病がもっともひどかった頃、彼女の心が壊れてしまった。
「私に、触らないで！」その言葉と共に、私の心も傷つき私も壊れてしまった。
私は、妻の世話をしてはいたが、彼女の心と重ねることはなくなった。
もはや、元に戻ることはないだろうと思っていた。
そんなある日、別々の寝室の寝ていた頃、寝苦しくなり、起きると妻が枕元に立っていた。
彼女は携帯の充電コードを私の首に巻き付けていた。起きた私に声も掛けずにそのまま寝室を出て行った。
今、彼女はじっとこちらを見ている。
私はレースのカーテン越し今、彼女は能面のような顔でじっとこちらを見ている。
私はレースのカーテン越しに彼女の無表情な顔を見ないふりをしながら、長い長い夜を過ごしていく。