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12月31日
大晦日。
窓の外では、どこかの家族が笑い合う声や、遠くで除夜の鐘の音が響いているのかもしれない。だが、この部屋には鉛のような沈黙と、底冷えする寒さだけが満ちている。
机の上には、色褪せることのない国家資格の合格証書が並んでいる。
宅建士、行政書士、賃貸不動産経営管理士、管理業務主任者、マンション管理士……。
そして、業務に使えるようにと取得した普通自動車第一種運転免許（MT）。
これらは私の「誇り」だったはずだ。
これさえあれば人生が変わる、這い上がれると信じて掴み取った「武器」だったはずだ。
けれど現実はどうだ。
宅建を取った。就職できなかった。
行政書士を取った。就職できなかった。
不動産管理系を網羅した。就職できなかった。
運転免許も取った。それでも、就職できなかった。
面接官の目はいつも同じだった。
「資格は立派ですが……」
その後に続くのは決まって「年齢が」「経験が」という拒絶の言葉。
40年以上、私が社会から突きつけられ続けたのは「お前は不要だ」という烙印だけだった。
結局、私が身を置いたのは、資格など何一ついらない日雇いの現場だった。
真夏の炎天下での看板持ち。
真冬の吹きっさらしの中での交通整理。
腰が砕けそうになる倉庫での仕分け作業。
ボーナス？ 0円だ。
昇給？ 0円だ。
手当？ 0円だ。
退職金？あるわけがない。
月収数万円。その日暮らしの小銭を握りしめ、ただ生き延びるためだけに、ボロボロになった体を動かし続けた。
「自分でやればいい」と思い立ち、なけなしの金をはたいて開業もした。
結果は残酷だった。売上は1円たりとも上がらず、誰からも依頼されず、静かに廃業した。
社会は、組織だけでなく、個としても私を必要とはしなかったのだ。
私は何のために勉強し、何のために歯を食いしばってきたのだろう。
8つの国家資格は、私を寒さから守る毛布にもならず、腹を満たすパンにもならなかった。ただの、虚しい紙切れだった。
もう、疲れた。
努力が報われるという幻想にも、明日は良くなるという欺瞞にも。
今年が終わる。
私の長く、寒く、報われなかった旅も、この年と共に終わりにしようと思う。
さようなら。