ライブハウスで僕の前に立っていたのは｜かおるの投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

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かおる

2025/12/06

ライブハウスで僕の前に立っていたのは
波平さんにそっくりな小さなおじさま
50歳は越えてあるであろうそのおじさまは
パッとしないスーツと革靴にバッグを持ち
ステージから5列目くらいに陣取っていた

アーティストの名前はもう思い出せない
アメリカから来たアイドル風味のシンガー
客層は20代。大半が女性か、その彼氏
それ以外は中性的な男性、そして僕

その中に混じって、おじさまは立っていた

あまり興味のなかったそのアーティストより
僕の関心はおじさまに集中してしまった
演奏が始まっても微動だにせず
じっとステージを見つめたまま
いつからかマスクをして表情も分からない

踊る周りの客とぶつかってよろめいて
でもまた真っ直ぐ立って
じっとステージを見つめていた

子どもの引率？生徒指導の先生？
いろいろ想像したけれど、どれも違うみたい

結局おじさまは2時間微動だにしないまま
終演とともに、会場を出る楽しそうな
人たちの笑顔の影に消えていった

20年くらい前の出来事

自分もいい大人になって
久しぶりに一人でライブに行くようになり
そのおじさまのことを思い出すようになった

年齢など関係なく、他人の目も気にせず
自分の好きなものを心から楽しもうとして
いたであろうそのおじさまを
僕はかっこいいと思えるようになった

そして、鞄はコインロッカーに入れた方が
楽で安全だということを
教えてあげなかったことを少しだけ反省した

みんな、好きなことをやっていいんだよ

というお話でした