人々が考えることを気にかけることは、あなたが誰であるかを忘れる最も早い方法です。

後白河院と白拍子は、平安末期の宮廷芸能（特に「今様」）を通じて深く結びついており、後白河院は今様をこよなく愛し自らも歌い、その伝承のために『梁塵秘抄』を編纂しました。白拍子は、院の法住寺殿で催された今様合（あわせ）に集まり、院と共に歌舞を競い合った人気芸能者たちで、院は彼女たちを庇護し、その中には祇王や仏御前、乙前といった有名な白拍子がいました。
後白河院と白拍子の関係
今様への熱中: 後白河院は、幼少の頃から今様（流行歌）に没頭し、生涯を通じて歌い続けました。自らの喉を潰しても歌を止めなかったという逸話が残るほどです。

『梁塵秘抄』の編纂: 院は、今様の技術や歌を後世に伝えるため、自らの経験や知識を『梁塵秘抄』口伝集としてまとめました。これは現代に今様を知るための貴重な資料です。

法住寺殿での芸能: 院の御所である法住寺殿では、今様合が頻繁に開催され、白拍子たちが集まって歌舞を披露しました。これは単なる娯楽ではなく、神仏に捧げる神聖なものとも考えられていました。

主な白拍子の名前と逸話
乙前（おとまえ）: 院に仕え、今様の名手として知られました。彼女の死後、後白河院は一周忌に彼女に習った今様を夜通し歌い続けたとされています。

祇王・祇女（ぎおう・ぎにょ）: 平清盛に寵愛された白拍子として有名ですが、清盛の没落と共に仏門に入り、祇王寺にこもり、後白河院は彼女たちの供養も行いました。
仏御前（ほとけごぜん）: 祇王の妹で、こちらも有名な白拍子です。

歴史的意義
後白河院は、政治家としてだけでなく、芸能のパトロンとしても非常に重要であり、彼の活動によって「今様」や「白拍子」といった文化が花開き、中世芸能の基礎が築かれました。

白拍子たちは、後白河院の時代を彩り、また後鳥羽院の時代に全盛期を迎えて「承久の乱」の原因の一つとなるなど、歴史の動乱にも関わっていくことになります。

後白河院と白拍子の関係は、単なる主従ではなく、芸能を通じて魂を共鳴させた、非常に深いつながりだったと言えるでしょう。