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闇バイトダメ・創作家

闇バイトダメ・創作家

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小説:『ノルマ』

「高収入、渡航費無料、即採用」
SNSのDMに届いたその言葉に、翔太は心を動かされた。大学を中退し、借金を抱え、家族にも顔向けできない日々。そんな彼にとって、海外で一発逆転できるチャンスに見えた。

「マレーシアで簡単な事務作業。月収80万円以上」
疑う余地はなかった。むしろ、疑う余裕がなかった。

空港に着くと、迎えの男がいた。無表情で、無言。車に乗せられ、山奥の施設へ。そこから翔太の“仕事”が始まった。

パスポートとスマホは「管理のため」と言われて没収。代わりに渡されたのは、古びたノートパソコンと、詐欺マニュアル。

「お前のノルマは月300万円。達成できなければ、外との連絡は遮断される」
同じ部屋には、同じように連れてこられた若者たちがいた。皆、目が死んでいた。

翔太は必死に詐欺電話をかけた。老人を騙し、家族を騙し、罪悪感を麻痺させながら数字を積み上げた。
だが、ノルマは厳しかった。達成できない者は、食事が減り、部屋が暗くなり、名前で呼ばれなくなった。

ある日、隣の部屋の男が消えた。誰も理由を聞かなかった。聞くことすら、禁止されていた。

翔太のノルマ未達が続いた。

ある夜、黒服の男達が部屋に入ってきた。
「お前は用済みだ」
その言葉の意味を、翔太はすぐには理解できなかった。

地下室に連れて行かれた翔太は、手術台のような場所に寝かされた。
「臓器は高く売れる。お前の命より価値がある」
麻酔の匂いが鼻を突いた瞬間、翔太は叫んだ。

数ヶ月後、渡航先の国の郊外で焼却された遺体が発見された。身元不明。
その遺体が翔太だったかどうかは、誰にもわからない。

ただ、彼の母親のスマホには、最後に届いたメッセージが残っていた。

「ごめん。高収入に飛び付いた俺が、間違ってた。」

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この物語はフィクションです。
しかし、現実に起きていることでもあります。
「楽して稼げる」その言葉の裏に、命を奪う罠が潜んでいることを、どうか忘れないでください。

※本作品の無断転載・複製・改変を禁止します。
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