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彰(療法家)

彰(療法家)

午後の光が、薄いカーテン越しに部屋へ流れ込んでいた。
 キャンバスの前に立つ妻は、筆先にそっと色を含ませる。花弁の先に宿った朱は、まるで陽だまりの温度を閉じ込めたかのようだった。

 彰は、何気なく覗き込んだ瞬間、言葉を失った。
 そこに咲いていたのは、絵の具で描かれたはずの花でありながら、息づくように瑞々しく、香りすら漂ってきそうな花だった。

 「……すごいな」
 かすれた声が自分の口からこぼれたことに、本人も気づかなかった。
 妻は振り返り、少し照れくさそうに笑う。
 その笑みは、花の色彩よりも柔らかく、彰の胸に沁み込んでいった。
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 午後の光が、薄いカーテン越しに部屋へ流れ込んでいた。