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jef@趣味

純

くろた

あお🫧
失恋して、一年がたったころだった。
季節がいくつかめぐっても、私はうまく笑えずにいた。
様子が変だと気づいた友達が、ある夜、ふいに連れ出してくれた。
「お酒は飲めないけど、行ってみよう」
そう言って連れていかれたのは、
小さなビルの一角にあるBarだった。
私は、ノンアルコールのきれいな飲み物を
ただ、じっと見つめていた。
氷が音を立てて揺れるのを、
ぼんやり眺めていた。
そのときだった。
「こんばんは」
と、隣からやわらかい声がした。
オーナーさんだというその人は、
とてもよくしゃべる人で、
私は半分も覚えていないくらい、
いろんな話をしてくれた。
「抜けるから、ちょっと待ってて」
そう言って、彼は私を夜景の見える場所へ連れていった。
夜景──
それは、かつての彼との初デートの記憶だった。
光の向こうに、思い出がまだ疼いていた。
私は、ひとりのようにしてそこに立って、
ただ、空の奥を見つめていた。
どのくらい黙っていたのか、わからない。
ふと、視線を感じて横を見ると、
彼は私を見ていた。
でも目が合った瞬間、すっとそらした。
私は、なぜかその人に、失恋の話をした。
誰にでも言える話じゃなかったけど、
その夜は、言葉が自然にこぼれた。
彼はちゃんと聞いてくれた。
そして、少し笑って言った。
「だっさ(笑)俺、振られたことないし」
負けず嫌いの私も、さっきまでのしょんぼりを忘れて
「私だって“初失恋”だもん!」とむきになって、
ふたりで、あははと笑った。
帰り道。
コインパーキングで、
車から降りた私に、彼が少しだけ近づいてきた。
髪にふれるかふれないかくらいの指先で、
そっと、なでた。
それが、出会いだった。
その日だけのおしゃべり。
ふたりきりで話すのは、それが最初で、最後だと思っていた。
“また”があるなんて、思っていなかった。
まさか、それから3年も続く関係になるなんて──
その夜の私には、想像もできなかった。
わたし日記~徒然帖~
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葉月
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