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『異端者の家』
★★★★★★☆

あの、ロマンティック・コメディの帝王と言わしめたヒュー・グラントが、身の毛もよだつ異端者を演じ切る。

モルモン教の宣教師であるシスター・パクストンとシスター・バーンズ。
2人は敬虔に布教に勤しんではいるが、実質は若い女性である。
そんな彼女らがその日訪れたのは、森の中の小さな家。日中晴れていた空模様も、夕刻からは雨に変わっていた。
2人を出迎えたその家の主人は、リードと名乗る初老の男性だった。
雨に濡れる2人を慮ってか、リードは邸内に彼女らを招く。しかし2人は、教義の上でも、男性だけの建物に入ることは許されない。リードはパイを焼いている妻がいることを告げ、2人はその言葉に安心して邸内へと入る。

それが、地獄の始まりだった。

気さくな物腰のリードだったが、あらゆる宗教に精通しているらしく、彼女らの浅い宗教知識を悉く論破し、そしてパイを焼いているはずの夫人は一向に姿を現さない。

どうやら様子がおかしい事に気付いた2人だったが、入ってきた玄関のドアは施錠の形跡も無いのに開かなかった。

2人のシスターは、この家の主人が『異端者』である事に、この先嫌というほど、気付かされる。

A24制作。ヒュー・グラント主演。
この組み合わせだけでも凄いのに、近年のグラントの作品選びは自身の殻を打ち破っている。
お人好しのキャラをいつも演じている彼だからこその怖さがそこにはあり、異端者リードの宗教論破がカタルシスを生む。
特に、ボードゲーム『モノポリー』をモチーフにした宗教学には感嘆した。
宗教に疎いボクでも深く納得出来る仮説であり、だがかなり的を射ている真理なのではとも思わされた。
その後、2人のシスターが右往左往するのだが、後半の展開にややご都合主義な部分も見えた。

しかしそれを差っ引いても余りある達成感。

近年のスリラーの中では上位に挙げて遜色ない、そんな1作だった。

シスター・バーンズ役のソフィー・タッチャーがどストライク。

#映画
#小さな幸せ

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