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【小説家さんとゾウさんを見に行く１０】#まる婚活

彼は帰り際、かき氷屋に行くと言う。
11月のかき氷…私は事前に断ったでしょうよ…　なんでまだあるのよ…。
冷え性は戦慄した。

小刻みに震える私をよそに、彼の車はかき氷屋に向かう。
向かうとそこには【冬季休業】の札がついていた。

「あれ？　休みですね」
テイクアウト専門のお店だったので、冬はどうしても無理なのだろう。

「ではもう帰りましょう」
『はい』
「駅まで送ります」
『ありがとうございます』

車はそのまま駅へと向かう。
電車で駅まで来たのは私の勝手だから、地元まで車で送ってもらえなくても構わない。
仕事で疲れている彼に、高速道路まで使って『自宅の方まで送って』とは到底言えない。

そもそもデートで車を出してくれたのも彼の善意だ。
今現状で『ありがとう』と言う以外に無い。

私はそれよりも、彼が車中でも「疲れた」「疲れた」を繰り返す方が気がかりで、ただ労いの言葉をかけ続けた。
車の中は軽い沈黙が流れる。

どう言葉を切り出したら良いのか、とても悩んだ。
いやいや、ダメもとでしっかりと話をするって決めたじゃないか！

『あの…　私達、会うタイミングが少ないと思うんですが…』
「…はい」

彼も察したようで真面目に返事をする。

『もう少し、会うタイミングを…増やしませんか？』
「…そう、です、ね」

『それで…』
「あ、ちょっと待って」

彼が車のナビに手を出す。
「なんか変な道に来ちゃったな」
『…』

「あっ　この先がさっき言ってた喫茶店ですね」
『…あ、そうなんですね』

不器用だ、私。

彼に落ち度は無いし、ただのタイミングでしかないのに…　そのまま、関係の無い喫茶店の話になってしまった。
どうやって話を戻したら良いんだろう、と悩みながら言葉を選んでいると

「着きました」
いつの間にか、駅に着いていた。

「駐車場じゃなくてすみません」
そこは駅の送迎用スペースだった。
後ろには待っている車もいる。早く降りなければ周りの迷惑になる。

『またラインします！』
「はい」

彼にまともな話が出来ないまま、別れることになった。

こうなったらラインから話をしよう。
さっそく『先ほどはありがとうございました』とラインを入れる。

しかし、彼が【既読】になることは二度と無かった。

（反省会へ続く）